臍ヘルニア
1. 概要
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臍ヘルニアは、臍輪(おへその筋膜の穴)が十分に閉じず、腹腔内容が皮下にふくらむ状態です。多くは無症状で、体重増加とともに自然に目立たなくなります。5歳時点までに約9割が自然閉鎖します1)。
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嵌頓(戻らない)や絞扼(血行障害)は稀で、観察が標準的方針です。米国小児科学会(AAP)も無症候例は4–5歳まで経過観察を推奨しています2)。
2. 症状・診断
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立位・泣く・いきむなどで膨らみ、手で押すと還納できる。ごくまれに嵌頓し腸閉塞をきたす。
Photo: Jpogi, Umbilical Hernia(Wikimedia Commons, Public Domain)
3. 自然経過と閉鎖率
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大規模コホートでは5歳までに88.6%が自然閉鎖すると報告あり。3歳で残存しても5歳までの追加観察で約35%が閉鎖します(小さいヘルニアほど閉鎖しやすい)1)。
4. 治療の選択肢
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第一選択:経過観察または圧迫療法(無症候・還納可能例)。
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手術:嵌頓・絞扼・破裂、腹水合併、5歳以降も残存、2歳時点でも巨大で形態問題が強いなどは手術適応を検討します2),3)。ただし、手術適応については施設差もあります。
5. 圧迫療法について
綿球や、専用デバイス(へそ圧迫剤パック(ニチバン);税込3520円))を用いる方法があります。
5-1. 何のために行う?
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自然閉鎖を早める可能性や、閉鎖後に残る臍の冗皮(いわゆる“でべそ形”の余り皮膚)を減らす目的で、日本では広く実施されています3),4)。
5-2. 有用性(エビデンス)
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系統的レビュー/メタ解析(コホート10件)では、最終閉鎖率の差は全体では有意でない一方、
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生後6か月時点までの早期閉鎖は有意に促進、
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冗皮を伴う突出(整容的問題)を予防する効果が示されました3)。
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日本小児外科学会の解説も、ヘルニアが小さい/開始が早いほど効果が高く、生後6か月以降は効果が低下と述べています4)。これらのことから、当院では、生後6か月以降は推奨していません。
5-3. デメリット・合併症
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皮膚障害(びらん、接触皮膚炎、湿疹、感染)。市販キットの使用で臍部びらんを生じた事例が日本小児科学会の傷害速報で報告されています6)。
5-4. 対象・開始時期・期間
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対象:無症候・還納良好、整容面の配慮が必要な形態、健康な皮膚の児
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開始:生後1–3か月を目安に早期開始。6か月以降は効果が乏しいため原則勧めません4)。
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期間:週1回または毎日貼り替え。
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やめ時:臍窩が形成され、解除後1–2週間で再突出がない。
6. 手術について
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通常は日帰り〜短期入院の開放手術(ヘルニア嚢切除+筋膜縫縮)。
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合併症は稀だが、若年(<4歳)修復は再発・合併症が相対的に多い報告があり、時期選択が重要です3)。
7. よくある質問
Q. 3歳でまだ残っています。待つ価値はありますか?
A. 大規模研究では3→5歳の2年間で約35%が自然閉鎖しました。整容面・通園生活なども踏まえ、手術と待機のバランスを個別に検討します1)。
Q. 圧迫療法は必ず必要?
A. 必須ではありません。整容面の改善を重視するご家庭に短期・安全第一で提案します。皮膚トラブルのデメリットも説明し、共有意思決定で選びます3),5),6)。
参考文献
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He K, et al. Age and Probability of Spontaneous Umbilical Hernia Closure. JAMA Pediatrics. 2024;178:e241
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Benítez TM, et al. Impact of AAP Consensus Guideline on Timing of Pediatric Umbilical Hernia Repair. Surgery. 2023;174(6):1281-1289
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Lucas AGT, et al. Pediatric Umbilical Hernia. StatPearls . 2023 update.
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Sugimoto T, et al. Efficacy of Adhesive Strapping on Umbilical Hernia in Children: Systematic Review and Meta-analysis of Cohort Studies. World J Pediatr Surg. 2023;6(4):e000633.
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Choosing Wisely–AAFP. Avoid referring most children with umbilical hernias to a pediatric surgeon prior to 4–5 years of age.
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日本小児科学会 こどもの生活環境改善委員会. Injury Alert No.124:臍圧迫キットにより生じた皮膚びらん. 2023.
