食物負荷試験
食物負荷試験
当院では「食べて治す」食物アレルギー診療を行っています。
近年の研究から、完全除去期間が長くなると、耐性獲得(=治る)の可能性が低くなることがわかっています。また、物心つく年齢まで除去がつづくと、その食物に対する嫌悪感が強くなってしまいます。
食物アレルギーと診断されても、なるべく早い段階でそのお子さんに応じた「食べならし」を行うことが、食物アレルギーの早期治癒には重要です。この「食べならし」を安全に行う量を提案するために必要なのが「食物負荷試験」です。
この方法のメリットは、自宅で増量を行う必要がないことです。病院で増量することで、自宅で増やすよりも安全に進めていくことができます。
※近隣の医療機関の皆様へ
食物アレルギーのお子さんは、なるべく低年齢のうちにご紹介いただけますと幸いです。
近年の報告では、6歳までの自然寛解率は鶏卵約60〜80%、牛乳約50%、小麦約60%とされています(参考文献1-4)。なるべく低年齢から介入することで、これを大きく向上させることができる可能性があります。
食物負荷試験の流れ
①過去の症状と血液検査値から、負荷試験で食べる量を決定します。
負荷試験量の例(個別に調整することがあります)
②負荷試験は午前または午後に行います。食材は一部を除いて基本的にご自宅で調理・持参いただきます。単回または2回にわけて、目標量を摂取してもらいます。そのまま食べられないお子さんに関しては、見た目や味がわかりにくいようにして食べていただきます(マスキング)。
食物負荷試験スケジュール例
③症状が出なかった場合は、最終摂取から2時間経過後に検査終了となります。症状が出てしまった場合は、抗アレルギー薬内服(重症な場合点滴等)の治療を行います。
検査終了後は、検査結果に応じた自宅負荷(食べならし)を行っていただきます。
※この食べならしが食物アレルギーの治療には非常に重要です。基本的に週3回摂取いただきます。きちんと週3回食べられたお子さんは早く治りますし、摂取頻度が低いと治りにくくなったり、次の検査で症状がでてしまう確率が高くなったりします。
④負荷試験が陰性(症状がでなかった)の場合、2〜3か月後に次の負荷試験を行います。スムーズに行くと、上記の表のSTEP 1からはじめても、1〜2年でゴール(解除)まで到達します。負荷試験で陽性(症状がでた)の場合も、次の負荷試験は減量してすすめていくことで、なるべく早く治癒を目指します。
参考文献
- Peters RL, et al. The natural history of peanut and egg allergy in children up to age 6 years in the HealthNuts population-based longitudinal study J Allergy Clin Immunol 2022.
- Sicherer SH, et al. The natural history of egg allergy in an observational cohort J Allergy Clin Immunol 2014.
- Kubota K, et al. Natural history of cow’s milk allergy in children aged 6–12 years Pediatr Allergy Immunol 2023.
- Koike Y, et al. Predictors of Persistent Wheat Allergy in Children: A Retrospective Cohort Study Int Arch Allergy Immunol 2018.
- 日本小児アレルギー学会『食物アレルギーガイドライン2021』
