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こどもの低身長

2023.12.20

☆当院では岩淵医師外来(金曜午後)にて成長ホルモン補充療法を行っております☆

子どもの発達発育に関する心配や不安は子育てにつきもの。子育て経験がある方でも、一人一人成長のスピードは異なるため、身長が伸びないかも、体重が増えないなど気になることがあるのは当然です。そんな子育ての悩みの中から今回は、低身長についてよくいただく相談や質問についてまとめましたので、ぜひご覧ください。



どれくらい背が低いと低身長なの?

周りの子どもよりも身長が低いからと言って必ずしも低身長と診断されるわけではありません。低身長の診断には、その年齢や月齢に応じた平均身長よりも2SD(標準偏差)分以上身長が低いかどうかが基準となります。母子手帳や健診結果の際に、身長や体重を記録した成長曲線を渡されるかと思いますが、成長曲線の中に平均値と±2SDの線が記載されています。簡単に言えば、平均の下にある-2SDの曲線よりも下にある場合は低身長と診断される可能性があるということです。

*標準偏差とは

平均からのばらつきの程度を示す指標で、-2SDは全体で2.3%以下を意味しています。例えば100人子どもがいると、背の順で並んだ時に概ね1~3番目になることになります。




-2SDの場合はすぐに低身長と診断されますか?

平均よりも-2SDになっているのが初めての場合や一時的な場合には、診断はつけずに様子を見ることもあります。お子さんの成長曲線が平均より2SD低い状態が長期的に続く場合や、標準的な曲線に沿わない形で変化している場合には、低身長や発育に何らかの異常がある可能性を考慮して精密検査を行います。



低身長の原因はどんな病気があるの?

低身長というと成長ホルモンの問題を心配される方が多いです。確かに成長ホルモンの分泌異常が影響していることもありますが、実は低身長にはいくつかの病気が関わっている可能性があります。

・成長ホルモン分泌不全性低身長症

脳下垂体から分泌される成長ホルモンが少なくなる病気です。

・甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンの分泌が低下することでも低身長になります。

・SGA性低身長症

母胎内で標準的な身長や体重までに育たなかった場合に低身長になることがあります。

・ターナー症候群

女子だけに見られる病気で、染色体の異常が原因です。

・ヌーナン症候群

遺伝子の問題により起こる病気で、心臓の病気を起こしやすいことも特徴です。

・軟骨異栄養症

軟骨細胞の異常により骨がうまく作られず、手足の短さや体のバランスに特徴が見られます。



病気以外に低身長に影響することはありますか?

病気以外に考えられる原因としては、遺伝的要因の考えらえる家族性低身長や栄養不足などに関連する特発性低身長があります。

家族性低身長は両親の2人または1人に身長が低い人がいる場合に、その人に似て身長が低くなることを言います。

  ※両親の身長から児の最終身長を予測することができます。

   男の子:{父親の身長+(母親の身長+13)}÷2

   女の子:{(父親の身長−13)+母親の身長}÷2

特発性低身長とは、ホルモンの異常や他の病気も疑われずはっきりとした原因も分からない低身長のことです。乳幼児期にミルクの飲みが悪かった、小食だったなど栄養不足が影響していることがあります。



離乳食にしたとたんに身長の伸びが止まった気がしますが大丈夫ですか?

母乳から離乳食に切り替えたタイミングでは、うまく食べられず食べる量が減ることもあります。また、ハイハイや伝い歩きなどが始まり活動量も増えます。身体活動量と栄養バランスに注意しながら、十分なカロリーを摂取できるように心がけてください。



低身長だとどんな影響が出ますか?

基本的には低身長でも健康上の問題になることはほとんどありません。ただし、ご家族など周りの人の価値観によっては背が高い低いで優越感や劣等感を感じるようになることがあります。一人一人の個性として向き合ってあげることが大切です。

心臓や腎臓などの病気が原因であれば、放置していると病気が進行して影響が出る可能性があります。



どうすれば低身長に早く気付くことができますか?

低身長に早く気付くには、お子さんの成長をしっかりと記録することが一番です。乳幼児健診の際に継続的に記録をつけましょう。身長の伸び方には個人差があるので標準的な範囲内なのか、どのように変化しているかをしっかり見ていきましょう。



低身長の治療はできますか?

低身長の原因によっては治療が可能です。例えば、甲状腺機能低下症や脳腫瘍、腎不全などが原因となっている場合には、原因の治療をしっかり行っていくことで身長の伸びが改善していくことがあります。

また成長ホルモンの分泌そのものに異常がある場合(成長ホルモン分泌不全、ターナー症候群、軟骨無形成症、プラダーウイリー症候群)などの場合には成長ホルモンを注射することで改善していくことが報告されています。

一方で、中には治療しても解決できない原因があり、成長ホルモン受容体異常、体質性低身長など原因のよくわからない低身長には現在では治療する方法がありません。



成長ホルモン注射は誰でも治療を受けられますか?

成長ホルモン注射は誰でも治療を受けられるわけではありません。成長ホルモンの分泌が低下しており、成長ホルモン注射により低身長の改善が期待される場合に適用となります。成長ホルモン分泌量は血液検査にて測定します。分泌が不足しているかどうかは、成長ホルモン分泌を促すお薬を投与した上で血液検査を行い評価します(負荷試験)。実際には、−2.5SD以下の低身長が成長ホルモン治療の対象になります。
上部でもお伝えした通り、低身長の原因も様々あります。成長ホルモン注射で治療適用となるかについては、当院にご相談ください。



成長ホルモン以外の治療方法はありますか?

成長ホルモン注射以外での治療方法としては、基本的には栄養バランスのとれた食事をすること、睡眠を十分にとること、適度な運動をすることが挙げられます。ただし、腎臓や心臓など内分泌系に異常が見られる場合には、そちらの治療も併せて行うことが大切です。



成長ホルモン注射をしても思ったように身長が伸びていないようです

成長ホルモンを注射したからといって、一気に身長が伸びるというわけではありません。成長ホルモン注射は、分泌が足りない成長ホルモンを注射で補うことで体に本来備わっている力を引き出すことが目的です。成長ホルモンの効果が出やすいのは、注射を初めてから1~2年ごろと言われていますので、大変ですが注射治療を継続していきましょう。経過で気になることがあれば、当院にご相談ください。