メディカルダイエット外来
1900.08.19
目次
1. はじめに
メディカルダイエットとは、医師の管理のもと、医療機関で行われる医学的根拠に基づいたダイエット方法のことです。
当院では、GLP-1受容体作動薬である、マンジャロ®およびリベルサス®を用いています。
当院の内科外来では、多くの生活習慣病やその予備群の方を診察しています。
こうした方の中には、肥満が改善されれば病気も改善することがわかっているものの、生活指導を行ってもなかなかダイエットを実行・維持することができない方も多く、日々の診療ではもどかしさを感じていました。
ダイエットは食事が8割、運動が2割と言われています。
ダイエットがうまくいかない多くの方は、食欲のコントロールが難しいことが原因です。
食欲には個人差があり、節制をすることが大きな負担にならない人もいれば、非常に大変な人もいます。
GLP-1受容体作動薬は、食欲を効果的に抑えることでダイエットを助けることができる、画期的なお薬です。
GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病や高度肥満症の治療薬として世界中で用いられており、日本国内でも保険適応となっているお薬です。
副作用は0ではありませんが、多くの臨床試験や市販後調査により安全性が確認されたお薬です。
なお、SNS等で薬を用いた過度なダイエットが問題となっておりますが、
当院のメディカルダイエット外来は、BMI 25以上の方を目安とさせていただきます。
標準体重にも関わらず、極端な痩せ願望のある方には処方できませんので、ご了承ください。
2. GLP-1とは?
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、食事をとったあとに腸から分泌されるホルモンです。
このホルモンは、血糖値のコントロールや食欲の調整に重要な働きをしています。
GLP-1の4つの主な作用
・インスリンの分泌をうながす 血糖値の上昇を防ぐ
・食欲をおさえる 食べすぎを防ぐ
・胃の動きをゆっくりにする 満腹感が長く続き、間食が減りやすくなる
・血糖値の急な上昇をゆるやかにする 食後の眠気やだるさを防ぐ
なぜGLP-1が注目されているの?
現代の食生活では、GLP-1の働きが弱くなっている人が多いことが分かってきました。
特に肥満の方ではGLP-1の分泌が少ない、またはうまく効きにくい(GLP-1抵抗性)ことが多いとされています。
GLP-1の働きを薬で補ってあげることで、
✅ 無理なく食事量を減らせる
✅ 空腹感が減る
✅ 血糖値のコントロールも良くなる
などの効果が期待できます。
• Nauck MA et al., Diabetes Care, 2011
「肥満者は健常体型の人に比べ、GLP-1分泌が低く、インクレチン効果が低下している」
• Shah M et al., J Clin Endocrinol Metab, 2014
「肥満者ではGLP-1感受性が低下しており、体重減少により改善されることがある」
3. GLP-1受容体作動薬について
GLP-1受容体作動薬は「体のGLP-1の代わりをする薬」
GLP-1受容体作動薬は、体のGLP-1と同じような働きをする薬です。
注射タイプや飲み薬があり、医師の判断のもとで安全に使用できます。
当院では、注射製剤のマンジャロと飲み薬のリベルサスを使用しています。
3-1. マンジャロについて
3-1-1. マンジャロとは?
マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)/GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬という新しいタイプの注射薬です。
もともとは2型糖尿病治療薬として開発されましたが、強い食欲抑制作用と体重減少効果が認められており、肥満治療目的でも注目されています。
3-1-2. マンジャロの効果(臨床試験より)
■ 体重減少効果
• 約72週間の使用で、平均約15〜20%の体重減少
用量 | 平均体重減少(72週) |
---|---|
2.5mg | 約7.6% |
5mg | 約15.0% |
10mg | 約19.5% |
15mg | 約20.9% |
出典:Jastreboff AM, et al. NEJM 2022;387:205-216(SURMOUNT-1)
対象:BMI ≥30またはBMI ≥27 + 合併症のある非糖尿病者
3-1-3. マンジャロの使用方法
- ・週1回皮下注射
- ・なるべく毎週同じ曜日に投与します
- ・投与部位:腹部、上腕、太もも(主に腹部) 毎回場所を変えて打ちましょう
- ・自宅で患者さん自身が投与します(初回はクリニックで指導)
3-1-4. マンジャロの副作用と注意点
副作用 | 発生頻度 | 説明・備考 |
---|---|---|
悪心(吐き気) | 約12〜24% | 最も頻度の高い副作用。初期に多く、数週間で軽快することが多い |
下痢 | 約12〜21% | 比較的多いが、持続的なものは少ない |
便秘 | 約7〜10% | 悪心・下痢と並んで三大消化器症状 |
嘔吐 | 約5〜10% | 高用量で頻度が上がる傾向あり(15mgで10%以上) |
腹痛・腹部不快感 | 約5〜8% | 一過性であることが多い |
食欲減退 | 約6〜9% | 治療目的でもあるが、過度の場合は注意 |
味覚異常 | <5% | 稀だが報告あり |
3-2. リベルサスについて
3-2-1. リベルサスとは?
リベルサス(一般名:セマグルチド)は、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬の一種で、世界初の経口GLP-1製剤です。 もともとは2型糖尿病治療薬として開発されましたが、強い食欲抑制作用と体重減少効果が認められており、肥満治療目的でも注目されています。注射薬が苦手な方でも服用できることが特徴です。
3-2-2. リベルサスの効果(臨床試験より)
■ 体重減少効果
用量 | 平均体重減少(26-68週) |
---|---|
3mg | 約2-3%(約2.3-2.7kg) |
7mg | 約4-5%(約4.0-4.6kg) |
14mg | 約5-7%(約4.7-6.5kg) |
出典:Davies M, et al. JAMA 2017; 318(15):1460-1470(PIONEER-1)
対象:BMI ≥30またはBMI ≥27 + 合併症のある2型糖尿病患者
3-2-3. リベルサスの使用方法
- • 1日1回、起床時に空腹で服用
- • コップ約120 mL以下の水で服用(多すぎる水は吸収低下の原因となる)
- • 服用後30分は飲食・他の薬の服用を避ける
- • 毎日ほぼ同じ時間帯に服用する
- • 錠剤は噛まず・割らず・砕かずそのまま飲み込む
3-2-4. リベルサスの副作用と注意点
副作用 | 発生頻度 | 説明・備考 |
---|---|---|
悪心(吐き気) | 約8〜20% | 最も頻度の高い副作用。初期に多く、数週間で軽快することが多い |
下痢 | 約5〜15% | 一過性が多いが、持続する場合は減量や中止を検討 |
便秘 | 約5〜10% | 悪心・下痢と並んで三大消化器症状 |
嘔吐 | 約3〜8% | 高用量で頻度が上がる傾向あり |
腹痛・腹部不快感 | 約3〜7% | 主に開始初期におこる |
食欲減退 | 約6〜9% | 体重減少効果に寄与するが、過度な場合は注意 |
味覚異常 | <1% | 稀だが報告あり |
胆石症/胆嚢炎 | 稀(<1%) | 体重減少との関連が示唆されている |
膵炎(急性膵炎) | 非常に稀(<0.3%) | 重篤副作用。腹部持続痛があれば即受診を |
低血糖 | 稀(単剤使用時) | インスリンやSU薬など血糖低下薬併用時に注意が必要 |
脱毛 | 稀 | 急激な体重減少に関連する、一過性の脱毛(数ヶ月で回復) |
4. よくあるご質問(FAQ)
Q. どれくらいで効果が出ますか?
→ 個人差はありますが、2〜4週間で満腹感や食欲低下を感じる方が多いです。
体重変化は2〜3か月後から目立ち始めます。
最低3か月は継続しましょう。
Q. リベルサスは他の飲み薬と併用できますか?
→ 服用直後は吸収阻害の可能性があるため、他薬は30分以上あけて服用してください。
Q. いつまで続ければいいですか?
→ 目標体重や副作用の有無によって継続期間を調整します。
中止後は体重が戻る可能性があるため、生活習慣改善と併用が重要です。
Q. アルコールを飲んでよいですか?
→ 可能ですが、胃腸症状が悪化したり低血糖リスクが上がる場合があります。
飲む場合は少量で、食事と一緒に。
Q. GLP-1受容体作動薬を使用してはいけない人はいますか?
・チルゼパチド、セマグルチドに過敏症の既往がある人
・妊娠中の女性
・授乳中の女性
・15歳未満
・家族性・個人歴に甲状腺髄様癌(MTC)やMEN2がある人
参考文献
1. Jastreboff AM, le Roux CW, Stefánski A, et al.; SURMOUNT 1 Investigators. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity. N Engl J Med. 2022;387:205 216.
2. Davies M, et al. “Oral semaglutide versus placebo in patients with type 2 diabetes (PIONEER 1).” JAMA. 2019;321(15):1466–1480.
3. Pratley R, et al. “Oral semaglutide versus subcutaneous liraglutide and placebo in type 2 diabetes (PIONEER 4).” Diabetes Care. 2019;42(9):1724–1732.
4. Wilding JPH, et al. “Once-weekly semaglutide in adults with overweight or obesity.” N Engl J Med. 2021;384:989–1002.
価格表(税込み)
項目 | 価格 | 内容 |
---|---|---|
マンジャロ2.5mg | 20,900円 | 4本(1ヶ月分) |
マンジャロ5mg | 35,200円 | 4本(1ヶ月分) |
リベルサス3mg | 8,800円 | 30錠(1ヶ月分) |
リベルサス7mg | 16,500円 | 30錠(1ヶ月分) |
リベルサス14mg | 24,200円 | 30錠(1ヶ月分) |
※診察料込