ヒトメタニューモウイルス検査について
2018.04.23
ヒトメタニューモウイルスの流行時期となりました。
あまり聞き慣れないウイルスかと思いますが、2001年に発見されたウイルスです。
(200年前より存在していたようですが)
症状はRSウイルスと似ていると言われ、いわゆる「かぜ」で済むものから、
ごく一部ゼーゼーを伴う肺炎などを引き起こすこともあります。
症状がなく気づかれない不顕性感染も多いといわれています。
生後6か月頃から初感染が始まり,2歳までに50%,5歳までに75%,遅くとも10歳までに
一度は感染します。RSと同じく人生の間で何度も感染します。
一年中感染の機会はありますが、流行期は3-6月で、インフルエンザのあとに流行します。
潜伏期間は4-6日で、ウイルス排泄は1~2週間持続するとされています。
残念ながら、現時点ではインフルエンザのように特異的な治療はなく、他の風邪と同じく対症療法
が治療の中心となります。
ヒトメタニューモウイルスの迅速検査(インフルエンザのように鼻から行います)は2014年に
保険適用となりました。
従来は、「画像診断(X線など)により肺炎が強く疑われる6歳未満の患者」が適応となって
いましたが、2018年4月の改正により、聴診など理学所見で肺炎が強く疑われた場合にも
適応拡大されました。これに合わせて当院でも検査キットを導入しました。
感染力が非常に強いことから、免疫力が低下して重症化リスクが高い方が多い病院などでは、
感染管理の観点(部屋を隔離するため)から迅速検査が行われる機会が多いです。
一方で、特異的治療がないことから、外来診療ではまだあまり多く行われる検査ではないと
思われます(ロタやノロの検査があまり行われないのも同様の理由です)。
重症例では発熱が5日程度続いたり、肺炎を引き起こすため、これらの原因検索に用いられる
ことがほとんどかと思われます。
重症でない咳、鼻水の方は、インフルのように痛い思いをして検査するメリットはないので、
これまでどおり風邪だと思って対応して頂ければ十分です。
不顕性感染が多いこと、ウイルス排泄期間が長いこと、感染力が非常に強いことから、保育所など
集団生活を行う場で感染をコントロールすることは残念ながら不可能と考えられています。
飛沫感染なので、手洗いなどは有効です。
ご不明な点があれば、診察時にお気軽にご質問ください。
参考:小児科診療2015年10月号