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鉾田市内でのマイコプラズマの流行について

2018.08.31

7月から本格的に鉾田北中学区でマイコプラズマが流行りました。

https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=15325193186078

 

夏休みに入って落ち着くかと思われましたが、兄弟姉妹を通じて保育園の方でも散見されるようになってきました。

当院でも毎日複数人感染者を診ますので、簡単に解説いたします。

 

〜マイコプラズマについて〜

主に学童や高齢者に感染して、肺炎を引き起こします。

幼小児期の感染もありますが、この場合は上気道炎〜気管支炎までが主体で、症状も軽いことが多いです。

健常な成人も感染します。

 

【症状】一般的には熱に引き続いて2-3日後に乾いた咳(頑固)が起こります。鼻汁や痰絡みは目立たないのが普通とされていますが、あったからといって否定する材料にはなりません(ウイルスや細菌との混合感染もあります)。咽頭痛を訴える方もいます。種々の発疹やStevens-Johnson症候群などの重症皮膚障害を起こすことがあります。また、稀に脳炎などの中枢神経系合併症が報告されています。

典型例として、一日の中で熱があがったり下がったりして、1週間ぐらいかけてだんだん咳が悪化しているとかなり怪しいです。

基本的には飛沫・接触感染なので、マスクや手洗いでリスクを下げることができます。

潜伏期間は2-3週間あります。

 

【検査】数年前までは血液検査でマイコプラズマIgM抗体を測定していましたが、偽陽性が非常に多く、検査の意義に乏しいことがわかったため、最近はほとんど行われません。

2013年に喉を綿棒でこすって調べる「マイコプラズマ抗原検査」が保険収載され、迅速検査として行われています。感度が高くない(おおむね70-80%?)と言われ、間違って陰性とでる可能性も20-30%程度あるのが欠点です。当院では判定にクイックチェイサーを用いており、下記LAMP法との陽性一致率87.5%、陰性一致率100%(計170例)と報告されています。15分で判定できます。

より精度の高い検査は同じく咽頭拭い液を用いたLAMP法(遺伝子診断)がありますが、数日かかってしまうのが欠点です。主に確定診断に用いられます。

時間がたった症例では血液検査(PA法など)で複数回検査して調べることもあります。

 

【治療】抗生剤が有効で、通常投薬後2-3日以内に解熱して症状もよくなります。

特定の数種類の抗生剤しか効かないのが特徴です。

クラリスロマイシンやアジスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質が第一選択とされていますが、近年耐性化が問題となっています。当院でも流行りはじめの5-6月にこれらの薬を多く使用していましたが、ほとんどの症例が無効だったため、おそらくマクロライド耐性マイコプラズマが多く流行っていると思われます。耐性が疑われた場合はニューキノロン系やテトラサイクリン系(歯の黄染等が問題となるため8歳未満禁忌)が用いられます。

ただし、耐性といっても自然治癒も期待できます(もちろん有効な抗生剤を使用した場合より熱も咳も長く続きます)。

マクロライド耐性菌に対してマクロライドで治療した場合、感受性菌の場合と比較して有熱期間は3日程度延長すると報告されています。

一方で、有効な抗生剤投与にもかかわらず重篤な症状が続くこともあります。これは、マイコプラズマ肺炎の病態が菌による直接的なものだけでなく、患者の異常な免疫反応が主体であるからとされています。特に血液検査でフェリチンやLDHなどの値が高い場合は、ステロイドの併用が有効であるとされています。

「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017」によると、抗生剤の投与期間はクラリスロマイシン10日、アジスロマイシン3日、トスフロキサシン7-14日、ミノサイクリン7-14日と記載されています。

 

【登校・登園の目安】学校保健安全法によると、マイコプラズマは第三種感染症に指定されています。これは、常時出席停止扱いにはならないものの、流行期などによっては出席停止扱いになることもあることを意味しています。明確な日数は決まっていませんが、有効な治療を行い、熱がしっかり下がって咳も治まってきたら集団生活を許可する小児科医が実際には多いかと思います。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3632908/

によると、有効な抗生剤を10日間飲んでもまだ体の中にマイコプラズマが残っている人が30-70%程度います。基本的には濃厚接触で伝染るものですが、咳が出ているうちはマスクを付けるようおすすめします。

 

参考文献:

小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017

マイコプラズマ感染症 小児科診療 2018年第81巻増刊号

Therapeutic Efficacy of Macrolides, Minocycline, and Tosufloxacin against Macrolide-Resistant Mycoplasma pneumoniae Pneumonia in Pediatric Patients Antimicrob Agents Chemother. 2013 May; 57(5): 2252–2258.