メニュー

小麦アレルギー

小麦アレルギーは、乳幼児期にみられる代表的な食物アレルギーのひとつです。現在の食物アレルギー診療では、とにかく完全除去を行うのではなく、必要最小限の除去を基本とし、安全を確認しながら食べられる範囲を広げていくことが大切と考えられています。

当院では、食物負荷試験などを活用しながら、安全を確認したうえで食べられる形や量を見極め、継続摂取につなげていくことを大切にしています。園や学校での解除の目安としては、うどん200g相当以上が問題なく食べられることをひとつの目標にしています。また、学校給食では献立によって小麦量が多くなることもあるため、複数の小麦製品を同時に摂っても問題ないかを確認しながら進めていくことが重要です。

小麦アレルギーの基礎知識と原因物質

小麦アレルギーは、小麦を含む食品を食べたあとに、皮膚、消化器、呼吸器などにアレルギー症状が出る状態です。原因となるのは小麦中のたんぱく質で、主にグリアジンやグルテニンなどのグルテン関連蛋白、さらに水溶性蛋白が関与します。小児の即時型小麦アレルギーでは、ω-5グリアジンが重要なアレルゲンのひとつです。

なお、小麦アレルギーはセリアック病や非セリアックグルテン過敏症とは別の病気です。また、成人では小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)という病型もありますが、このページでは主に、乳幼児から小児で多いIgE依存性の即時型小麦アレルギーを中心に説明します。

小麦アレルギーでみられる主な症状

小麦アレルギーでは、次のような症状がみられます。

  • じんましん、赤み、かゆみ
  • 口のまわりの赤み
  • 腹痛、吐き気、嘔吐、下痢
  • 咳、ゼーゼー、のどの違和感
  • 元気がない、ぐったりする
  • まれにアナフィラキシー

症状の出方や強さはお子さんによって異なります。また、同じ食品・同じ量でも、体調不良や感染症、運動、寝不足、喘息の悪化などで反応が出やすくなることがあります。成人の一部では、食後の運動やNSAIDsなどの因子が加わって強い反応が出る病型も知られています。

小麦アレルギーの耐性獲得と将来の見通し

小麦アレルギーは、乳幼児期に発症しても、成長とともに耐性を獲得するお子さんが少なくありません。日本の低用量食物負荷試験の報告では、自然経過だけでみた場合の即時型小麦アレルギーの耐性獲得率は4歳時点で34%程度、耐性獲得年齢の中央値は6.3〜6.6歳とされています。一般には、6歳頃までに約60%前後が自然に良くなると説明されることが多いですが、経過には個人差があります。

次のような場合は、より慎重な評価が必要です。

  • 少量でも症状が強く出る
  • 反応した量が非常に少ない
  • 小麦特異的IgEやω-5グリアジン特異的IgEが高い
  • アナフィラキシーの既往がある
  • 喘息などを合併している

これらは、症状が長引きやすい、あるいは慎重に進める必要があるサインになります。

診断のための検査と食物負荷試験の役割

小麦アレルギーの診断は、血液検査だけで確定するものではありません。診断には、次の3つを組み合わせて考えます。

実際の症状 食品を摂取した際にどのようなアレルギー反応が出たか
血液検査 小麦特異的IgE、ω-5グリアジン特異的IgEの測定
食物負荷試験 専門医の管理下で実際に食品を食べて反応を確認する試験

小麦特異的IgEやω-5グリアジン特異的IgEは大切な参考情報ですが、それだけで絶対に食べられない、あるいはもう安全と決めることはできません。特にω-5グリアジン特異的IgEは、重い反応の予測に役立つことがありますが、実際にどの食品をどのくらい食べられるかは食物負荷試験で評価することが重要です。

調理方法や加工によるアレルゲン性の変化

小麦アレルギーでも、加工や調理によって反応性が変わることはあります。ただし、卵アレルギーのように加熱でアレルゲン性が大きく下がるとは限らない点が重要です。グリアジンをはじめとする小麦アレルゲンの一部は熱や消化に比較的安定で、加熱後の食品でも症状を起こしうることが知られています。

そのため、小麦アレルギーでは「しっかり火を通したパンなら大丈夫」「うどんより焼いた食品のほうが必ず安全」とは言い切れません。一方で、食品の加工条件によってIgE結合性が変化することはあり、個人差も大きいため、どの形の小麦なら食べられるかを個別に評価することが大切です。

治療の基本は「必要最小限の除去」と「安全な継続摂取」

現在の食物アレルギー診療では、必要最小限の除去が基本です。すべての小麦製品を長期間完全除去し続けるのではなく、今食べられる形や量を見極め、安全を確認しながら食べられる範囲を広げ、食べられることが分かったものは継続するという考え方が重視されています。

当院では、これまでの摂取状況に応じて開始量を決め、食物負荷試験は1〜6か月ごとに行い、その間は週3回を目安に指示量を継続摂取していただく方針です。継続することで、次の段階へ進みやすくなることがあります。うどんが食べにくい場合は、スパゲッティや食パンに換算して進めることもできます。

うどん10gの換算目安 ゆでスパゲッティ:約5g相当
うどん10gの換算目安 食パン:約2.9g相当

食物負荷試験で安全に食べられる量を確認

食物負荷試験は、実際に食品を食べてどのくらいまで安全に食べられるかを確認する検査です。血液検査だけでは分からない「うどんをどのくらい食べられるか」「パンやスパゲッティならどうか」「次にどの段階へ進めそうか」を判断するために、とても役立ちます。

近年の報告では、低用量の小麦負荷試験を起点にして、3〜6か月ごとに段階的に量を増やしていく方法が、耐性獲得につながりうることが示されています。負荷試験で症状が出た場合でも、状況によっては症状が出た量よりかなり少ない量から再挑戦することで、次の段階へ進めることがあります。

小麦摂取を継続することの重要性

食物負荷試験で「この量、この形なら食べられる」と確認できた場合、その後に医師から指示された量を継続して食べることはとても大切です。完全除去を長く続けると、解除のタイミングを逃したり、小麦そのものを苦手になってしまったりすることがあります。反対に、食べられる範囲を日常的に続けることは、次の段階へ進む助けになります。

また、解除後も定期的に小麦蛋白を摂取することが大切です。しばらく完全除去に戻ってしまうと、久しぶりの摂取で症状が出ることがあります。

ご家庭で小麦を進める際の注意点

  1. 自己判断で急に増やさない
    前回食べられたからといって、急に量を増やすのは危険です。量、頻度、食品の形は、指示どおりに進めることが大切です。
  2. 体調が悪い日は無理をしない
    発熱、咳、下痢、寝不足、喘息悪化などがある日は、普段より症状が出やすいことがあります。無理をせず摂取を控えましょう。
  3. 症状が出たら中止する
    ご自宅で症状が出た場合は、その日の摂取を中止し、速やかに医療機関へご相談ください。
  4. 食べ方を工夫する
    うどんやパンが苦手な場合は、カレーやスープに混ぜたり、食べ慣れた料理に少量ずつ入れたりすることで、無理なく続けやすくなります。

早期導入による小麦アレルギーの予防

食物アレルギー予防の考え方として、現在はアレルゲン食品の導入をむやみに遅らせないことが重視されています。日本のガイドラインでも、予防目的で原因食物の導入を一律に遅らせることは勧められていません。

国際的なガイドでは、離乳食が始まった後は、小麦を含む一般的なアレルゲン食品も年齢に合った形で1歳までに導入することが勧められています。導入後は、問題なく食べられる場合には継続的に食べることが推奨されています。特に、湿疹が強い赤ちゃんや、すでに別の食物アレルギーがある場合は、自己判断せず事前にご相談ください。

食品表示の確認と外食時の注意点

小麦は、日本では特定原材料として表示義務のある食品のひとつです。加工食品を選ぶときは、原材料表示を必ず確認しましょう。うどん、パン、パスタ、菓子だけでなく、揚げ物の衣、カレールウ、シチューの素、調味料などにも小麦が含まれることがあります。ただし、外食や中食では表示だけでは分かりにくいこともあるため、心配な場合は店側への直接の確認も大切です。

小麦アレルギーに関するよくある質問

加熱したパンやうどんなら大丈夫ですか? 必ずしもそうではありません。小麦は加熱でアレルゲン性が大きく下がるとは限らないため、食品ごとの反応性を個別に確認する必要があります。
うどん以外でも進められますか? はい。うどんが苦手な場合は、スパゲッティや食パンなどで代用できます。目安量を換算しながら進めていきましょう。
血液検査の数値が高いと、絶対に食べられませんか? いいえ。血液検査はあくまで参考情報であり、数値だけで食べられる範囲は決まりません。食物負荷試験で実際に確認することが重要です。

まとめ

小麦アレルギーは、乳幼児に多い一方で、成長とともに食べられるようになることが少なくありません。大切なのは、以下のポイントを守りながら進めていくことです。

  • 正しく診断すること
  • 必要以上の完全除去を続けないこと
  • 食べられる形と量を見極めること
  • 安全を確認しながら少しずつ広げること
  • 食べられる範囲を継続すること

小麦アレルギーが心配な方、小麦をどこまで食べてよいか迷う方、園や学校での対応にお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。


参考文献

  1. Ebisawa M, Ito K, Fujisawa T. Japanese guidelines for food allergy 2020. Allergology International 69(3): 370-386. (2020)
  2. Palosuo K, et al. Wheat omega-5 gliadin is a major allergen in children with immediate allergy to ingested wheat. J Allergy Clin Immunol 108(4): 634-638. (2001)
  3. Ito K, et al. IgE antibodies to omega-5 gliadin associate with immediate symptoms on oral wheat challenge in Japanese children. Allergy 63(11): 1536-1542. (2008)
  4. Itonaga T, et al. Three-year prognosis after low-dose oral food challenge for children with wheat allergy. Allergology International 73(3): 416-421. (2024)
  5. Keet CA, et al. The natural history of wheat allergy. Ann Allergy Asthma Immunol 102(5): 410-415. (2009)
  6. Czaja-Bulsa G, Bulsa M. The natural history of IgE mediated wheat allergy in children with dominant gastrointestinal symptoms. Allergy Asthma Clin Immunol 10: 12. (2014)
  7. Palosuo K, et al. Update on wheat hypersensitivity. Curr Opin Allergy Clin Immunol 3(3): 205-209. (2003)
  8. Ricci G, et al. Wheat allergy in children: A comprehensive update. Medicina (Kaunas) 55(7): 400. (2019)
  9. ASCIA. How to introduce solid foods to babies for allergy prevention. (2026)
  10. BSACI. Early introduction of food allergens. (2026閲覧)
  11. NIAID. Guidelines for the Diagnosis and Management of Food Allergy in the United States. (2011)

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME