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水痘(みずぼうそう)

水痘は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の初感染によって起こる発疹性疾患です。一般には「みずぼうそう」と呼ばれ、主に小児に多い感染症ですが、成人、妊婦、乳児、免疫不全のある方では重症化しやすいことが知られています。典型的には、かゆみを伴う赤い発疹が、水ぶくれ、水疱、かさぶたへと変化しながら全身に広がるのが特徴です。急性期には、赤み、水疱、かさぶたが同時に混在して見られることが水痘らしい所見です。また、発疹は頭皮や体幹から始まり、四肢へ広がることが多いとされています。

日本では2014年10月から水痘ワクチンが定期接種化され、患者数は大きく減りましたが、完全になくなったわけではありません。国立健康危機管理研究機構(JIHS)の2025年報告では、2025年第24週時点の累積報告数・入院例はいずれも過去5年間の同時期で最多となっており、引き続き注意が必要です。

水痘(みずぼうそう)の感染経路と強い感染力

水痘は非常に感染力が強い感染症で、空気感染、飛沫感染、接触感染で広がります。家庭内では特にうつりやすく、感受性のある濃厚接触者では約90%が感染するとされています。感染性がある期間は、発疹が出る1~2日前から、すべての発疹が痂皮化(かさぶた化)するまでです。そのため、まだ水疱が少ない段階でも周囲にうつす可能性があります。

なお、水痘・帯状疱疹ウイルスは、帯状疱疹の患者さんからも水痘として感染することがあります。特に、水痘にかかったことがなく、ワクチンも受けていないお子さんや大人は注意が必要です。

水痘の主な症状と経過

潜伏期間は通常10~21日程度で、一般には約2週間と考えられています。発症すると、発熱、だるさ、食欲低下などに続いて、かゆみを伴う発疹が出現します。水痘の特徴は、違う段階の発疹が同時に存在することです。病気全体の期間は通常4~7日程度です。

  1. ステップ1:紅斑(こうはん)
    皮膚に赤い斑点が出現します。
  2. ステップ2:丘疹(きゅうしん)
    皮膚が盛り上がり、ブツブツとした状態になります。
  3. ステップ3:水疱(すいほう)・膿疱(のうほう)
    水ぶくれになり、次第に膿を持ちます。
  4. 最終ステップ:痂皮(かひ)
    すべての水ぶくれが乾燥し、かさぶたになります。

発疹は体幹優位にみられることが多いですが、頭皮、顔、四肢、口の中に出ることもあります。口の中に発疹ができると、しみて食べづらくなることがあります。

ワクチン接種後の発症(ブレイクスルー水痘)

ワクチン接種後でも水痘にかかることがあり、これをブレイクスルー水痘と呼びます。一般には、ワクチン接種から42日以降に発症した水痘がこれにあたります。

ブレイクスルー水痘は、通常の水痘に比べて軽症で、発疹が少なく、発熱がないか軽いことが多いとされています。典型的には50個未満の発疹で済むことが多い一方で、軽症でも感染性はあり、見逃されやすいため注意が必要です。

水痘を疑うべき典型的な所見

次のような場合には、水痘の可能性を考慮する必要があります。特に、発疹の見た目がばらばらであることは、水痘を疑ううえで大切なポイントです。

項目 確認すべきポイント
発疹の特徴 かゆみのある水疱が体幹中心に出てきた
発疹の状態 発疹の時期がそろわず、赤い発疹・水疱・かさぶたが混在している
全身症状 発熱を伴っている
接触歴 周囲で水痘や帯状疱疹の人がいる
ワクチン歴 未接種、または接種回数が不十分、あるいは接種後でも軽い発疹が出た

重症化に注意が必要な合併症

多くの小児では自然に軽快しますが、水痘は決して「軽い病気」だけではありません。小児では熱性けいれん、肺炎、気管支炎などの合併症がみられることがあります。さらに重い合併症として、細菌性皮膚感染症、肺炎、脳炎、小脳失調、出血性合併症などが挙げられます。

特に、成人の水痘は小児より重症化しやすく、肺炎や脳炎などの重篤な合併症を起こし、死亡することがあるとされています。また、妊婦さんの感染では胎児死亡や先天性水痘症候群のリスクがあり、出産前後に母親が発症した場合には新生児が重症化することがあります。

水痘の診断と検査方法

多くの場合、診断は特徴的な発疹の見た目と経過から臨床的に行います。一方で、軽症例やブレイクスルー水痘では典型的でないことがあり、鑑別が難しいことがあります。

必要に応じて、水疱内容物を用いた遺伝子検査、ウイルス分離、血清学的検査などが行われます。また、水痘は感染症法上、五類感染症の定点把握対象であり、24時間以上の入院例は全数把握対象です。

水痘の治療と抗ウイルス薬

治療は、対症療法と、必要に応じた抗ウイルス薬治療が中心です。抗ウイルス薬は発疹出現後できるだけ早期、できれば24時間以内に開始すると効果が期待しやすいとされています。そのため、特に重症化リスクの高い方では、早めの受診が大切です。

一方、軽症の小児では、皮膚を清潔に保ち、掻きこわしを減らし、脱水を防ぎながら経過をみることも多いです。爪を短く切る、入浴や清潔保持を心がける、必要時に医師の指示でかゆみ対策を行うことが大切です。

家庭内でのケアと二次感染の防止

家庭では、掻きこわしによるとびひ(皮膚の二次感染)を防ぐことが大切です。以下のポイントに注意しましょう。

  • 爪を短く切る:皮膚を傷つけないようにします。
  • 清潔の保持:皮膚を清潔に保ちます。
  • 早期相談:かゆみが強いときは早めに医師に相談してください。
  • 水分補給:水分をしっかりとらせ、脱水を防ぎます。
  • 接触への配慮:妊婦さん、免疫不全の方、乳児との接触は避けてください。

登園・登校許可の基準と出席停止期間

水痘は学校保健安全法上の第二種感染症で、出席停止期間の基準は「すべての発疹が痂皮化するまで」です。つまり、新しい水疱がまだ出ている段階では登園・登校はできません。

これは見た目の問題ではなく、感染性が残っているかどうかで判断されます。なお、ワクチン接種後に軽症で発症し、痂皮化しない発疹のみの場合は、新しい発疹が24時間以上出ていないことが判断の目安となることがあります。

水痘ワクチンの定期接種と予防効果

予防の中心は、水痘ワクチンの2回接種です。定期接種のスケジュールは以下の通りです。

回数 標準的な接種時期
1回目 生後12か月〜15か月の間
2回目 1回目終了後、6か月〜12か月経過した時期(最短3か月以上あける)

対象期間は生後12か月から36か月に至るまでです。すでに水痘にかかったことがある方は、基本的には定期接種の対象外となります。ワクチン普及後、日本国内の患者報告数は著しく減少しており、その高い効果が証明されています。

病院を受診するタイミング

早めの受診をおすすめする場合

  • 水疱を伴う発疹が出てきた
  • 発熱を伴う
  • かゆみが強い、または口の中にも発疹がある
  • 周囲で水痘や帯状疱疹が流行している
  • ワクチン未接種、または接種歴が不明

すぐに受診・相談が必要な兆候

  • ぐったりしている、水分がとれない
  • 呼吸が苦しそうである
  • 強い頭痛、けいれん、意識がおかしい
  • 発疹が急速に増える
  • 妊婦、免疫不全、乳児に症状がある

まとめ

水痘は、空気感染を含む複数の経路で広がる非常に感染力の強い病気です。早期発見と適切な対応で、重症化や周囲への感染を防ぎましょう。

原因ウイルス 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)
感染期間 発疹が出る1〜2日前から、すべてがかさぶたになるまで
重症化リスク 成人、妊婦、乳児、免疫不全のある方
予防の基本 水痘ワクチンの2回接種
再開の目安 すべての発疹が痂皮化(かさぶた化)してから

当院では、水痘が疑われる発疹の診察、重症化リスクの評価、ワクチン歴の確認、登園・登校のご相談に対応しています。気になる症状がある場合は、感染拡大を防ぐためにも事前にお電話でご相談ください。

参考文献

  1. 国立健康危機管理研究機構, 水痘. 感染症情報提供サイト. (2025)
  2. 厚生労働省, 水痘ワクチン Q&A. (2026年3月10日版)
  3. Centers for Disease Control and Prevention, About Chickenpox. CDC. (2024)
  4. 国立健康危機管理研究機構, IDWR 2025年第24号<注目すべき感染症> 水痘. (2025)
  5. Centers for Disease Control and Prevention, Clinical Overview of Chickenpox (Varicella). CDC. (2024)
  6. Centers for Disease Control and Prevention, Breakthrough Varicella Fact Sheet. CDC. (2024)
  7. Centers for Disease Control and Prevention, Clinical Features of Chickenpox (Varicella). CDC. (2024)
  8. Centers for Disease Control and Prevention, Chickenpox Symptoms and Complications. CDC. (2024)
  9. Centers for Disease Control and Prevention, How to Treat Chickenpox. CDC. (2024)
  10. 学校保健安全法施行規則. e-Gov法令検索. (2026閲覧)
  11. 厚生労働省, 水痘ワクチン. (2026閲覧)

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