メニュー

停留精巣/遊走精巣

お子さんの検診などで「精巣がおりていない」と指摘されると、ご不安に思われる保護者の方も多いかと思います。停留精巣と遊走精巣は、精巣の位置に異常が見られる状態ですが、その性質や対応は大きく異なります。ここでは、それぞれの違いや受診の目安、最新の診療ガイドラインに基づいた治療方針について解説します。

停留精巣と遊走精巣の違い

停留精巣と遊走精巣は、見た目は似ていますが根本的な状態が異なります。

停留精巣 精巣が陰嚢内にない状態です。胎児期にお腹の中で作られた精巣が、出生前後に陰嚢内まで降りてこなかった場合に起こります。
遊走精巣 精巣が陰嚢内と鼠径部の間を行き来しやすい状態です。精巣を包む筋肉(精巣挙筋)の反射が強く、刺激で一時的に上がってしまうのが特徴です。

大きな違いは、手で陰嚢内までおろせるかどうかにあります。停留精巣は最初からおりていないのに対し、遊走精巣はおりてはいるが上がりやすい状態と言えます。

停留精巣・遊走精巣が起こる原因

停留精巣は、精巣の下降過程が何らかの理由で阻害されることで起こります。特に早産児低出生体重児での頻度が高いことが知られています。

停留精巣のリスク 在胎37週未満での出産や、出生体重が2500g未満の場合に頻度が高くなります。
遊走精巣の要因 精巣挙筋反射が強いことや、精巣を陰嚢の底に固定する組織が不十分であることなどが関与します。

どのような時に受診を検討すべきか

もっとも大切なサインは、陰嚢内に精巣を触れないことです。左右で陰嚢のふくらみが違う場合や、健診で指摘を受けた場合は注意が必要です。

遊走精巣では、寒いときや緊張したときに上がっているように見えても、入浴中や睡眠中には陰嚢内に確認できることがあります。保護者の方がリラックスした状態のお子さんを観察することは、重要な診断のヒントとなります。

診断と診察のポイント

診断において最も重要なのは、画像検査ではなく医師による触診です。

停留精巣の診断

陰嚢内まで十分におろすことができない、またはおろせても手を離すとすぐに元の位置に戻ってしまう場合は停留精巣と判断されます。

遊走精巣の診断

陰嚢内まで比較的容易におろすことができ、しばらくの間その位置に留まる場合は遊走精巣と診断されます。

診察の際は、手を温めてリラックスした環境で診ることが大切です。一度の診察で判断が難しい場合は、期間を空けて再評価を行うこともあります。

超音波検査(エコー検査)の必要性

保護者の方からエコー検査を希望されることもありますが、触れることができる精巣に対しては超音波検査のメリットは少ないとされています。

ガイドラインでも、遊走精巣の診断における超音波検査は補助的な役割に留まり、触診以上の情報が得られることは稀であるとされています。そのため、専門医への紹介を急ぎ、適切な手術時期を逃さないことの方が重要です。

受診の目安となるチェックリスト

以下の項目に当てはまる場合は、受診してください。

  • 生後6か月を過ぎても精巣が陰嚢内に触れない
  • 健診で停留精巣を指摘された
  • 以前はあったはずの精巣が、最近触れにくくなった
  • 左右で陰嚢の大きさに明らかな差がある
  • 鼠径部(足の付け根)にふくらみや痛みがある

特に、1歳までに精巣が確認できない場合や、成長に伴い位置が高くなってきた場合は、早めの評価が推奨されます。

停留精巣の治療:精巣固定術

停留精巣と診断された場合、基本的には精巣固定術という手術が行われます。

治療の主な目的は、将来の妊孕性(子どもを授かる能力)の低下悪性腫瘍(精巣がん)のリスクを抑えることにあります。また、精巣捻転や鼠径ヘルニアの合併を防ぐ、心理的な不安を軽減するといった側面もあります。

日本小児泌尿器科学会のガイドライン(2024年)では、生後6か月以降から1歳前後、遅くとも2歳ごろまでに手術を受けることが推奨されています。

遊走精巣の対応と「上昇精巣」への注意

遊走精巣は、直ちに手術が必要なわけではありません。陰嚢内におりることが確認できれば、まずは定期的な経過観察を行います。

しかし、遊走精巣の一部は成長の過程で上昇精巣(じょうしょうせいそう)となり、陰嚢内へ戻らなくなることがあります。上昇精巣と診断された場合は、停留精巣と同様に手術が必要となるため、定期的に専門医の診察を受けることが重要です。

放置した場合のリスク

「痛みがないから」と放置してしまうと、以下のようなリスクが高まる可能性があります。

  • 妊孕性の低下:特に両側の停留精巣では影響が大きくなります。
  • 精巣悪性腫瘍:一般の方に比べ、がん化のリスクが高まると報告されています。
  • 精巣捻転・外傷:陰嚢内にない精巣は、ねじれたり衝撃を受けたりしやすくなります。

お子さんの将来のために、適切な時期に評価と治療を受けることが非常に大切です。

ご家庭での観察と緊急時の対応

ご家庭では、入浴中などのリラックスした場面で、見た目の観察を行うだけで十分です。無理に強く触る必要はありません。 ただし、もし陰嚢や鼠径部に急激な痛みや腫れ、赤みが出た場合は、精巣捻転などの緊急疾患の可能性があるため、すぐに医療機関を受診してください。

まとめ

停留精巣は生後6か月を過ぎても自然下降の可能性が低いため、精巣固定術による早期治療が基本となります。一方、遊走精巣は経過観察が中心となりますが、将来的に手術が必要な上昇精巣へ変化しないか見守る必要があります。

当院では、お子さんの大切な成長をサポートするため、精巣の初期評価や適切な専門施設の紹介を行っております。気になる症状があれば、母子手帳をご持参のうえ、いつでもご相談ください。

参考文献

  1. 日本小児泌尿器科学会 停留精巣診療ガイドライン第2版(2024)作成委員会・編集,日本泌尿器科学会,日本小児外科学会,日本小児科学会 協力,停留精巣診療ガイドライン第2版(2024),日本小児泌尿器科学会,2024.
  2. 日本泌尿器科学会,「子供の精巣が降りていない」と言われた,日本泌尿器科学会 一般向け情報,2020年更新.

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME