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脊髄係留症候群(二分脊椎)

脊髄係留症候群(せきずいけいりゅうしょうこうぐん)は、脊髄の下端が周囲の組織に引っぱられて、正常より動きにくくなり脊髄に負担がかかる状態を指します。二分脊椎、特に潜在性二分脊椎に関連して見られることが多く、成長に伴って排尿・排便障害、下肢機能障害、足の変形などが目立ってくることがあります。また、開放性二分脊椎では出生時から神経障害を伴うことが多く、経過中の再係留が問題となることも少なくありません。

二分脊椎の種類と脊髄への影響

二分脊椎は、背骨や脊髄の形成異常を総称した呼び方です。大きく分けると、病変が皮膚の外に露出する開放性二分脊椎(脊髄髄膜瘤など)と、皮膚に覆われていて外見上は目立ちにくい潜在性二分脊椎があります。

開放性二分脊椎 出生直後から下肢の運動・知覚障害や膀胱直腸障害を認めることが多い。
潜在性二分脊椎 生後しばらくは症状が目立たず、成長とともに脊髄係留症候群として見つかることがある。

脊髄係留症候群を引き起こす主な原因

脊髄係留症候群の背景には、いくつかの先天的な異常が関与しています。代表的なものとして、脊髄脂肪腫、脂肪髄膜瘤、肥厚終糸、皮膚洞などが挙げられます。脊髄脂肪腫は、皮下と連続した脂肪組織が脊椎管内に入り込み、脂肪腫による圧迫と脊髄の牽引によって症状を引き起こします。また、開放性二分脊椎の手術後に、瘢痕や癒着によって起こる再係留も重要な原因の一つです。

注意すべき症状と身体的変化

脊髄係留症候群の代表的な症状には、排尿・排便のトラブル、下肢の運動・感覚障害、足の変形、歩き方の変化、側弯(そくわん)などがあります。特に二分脊椎に伴う下部尿路機能障害は非常に重要で、ガイドラインによれば、脊髄髄膜瘤の90%以上に何らかの神経因性下部尿路機能障害が見られるとされています。

症状の出方には個人差があり、最初は「尿が漏れる」「便秘がひどい」「つまずきやすい」といった軽いサインから始まることもあります。特に成長期には身長が伸びることで脊髄への牽引が強まり、症状が顕著になる傾向があります。

仙尾部皮膚陥凹(おしりのくぼみ)と皮膚所見

潜在性二分脊椎では、腰仙部の皮膚所見が診断の大きな手がかりになります。代表的な所見を以下の表にまとめます。

皮膚陥凹 おしりの割れ目付近にある「くぼみ」。
血管腫・変色 皮膚の一部が赤くなっていたり、色素異常が見られたりする状態。
皮下腫瘤 皮膚の下にしこりや盛り上がりがある状態。
異常毛髪 背中の正中付近に、局所的に毛が濃い部分がある。

受診を検討すべき陥凹の特徴

すべての皮膚陥凹(くぼみ)が危険なわけではありません。臀裂(おしりの割れ目)の中で、尾骨の上にある小さな陥凹は健常な赤ちゃんの約3%に見られ、多くは臨床的な問題がありません。しかし、臀裂より頭側にあるものや深い陥凹は、潜在性二分脊椎のリスクが相対的に高まります。

海外のメタ解析データでは、単純な陥凹での異常頻度が0.6%だったのに対し、非定型的な陥凹では8.8%、複数の皮膚所見がある場合は10.5%に上昇すると報告されています。日本国内の報告でも、特定の条件下では終糸脂肪腫などの異常が見つかるケースがあるため、慎重な評価が必要です。

診断のための検査方法

的確な診断のためには、専門医による詳細な診察MRI検査が不可欠です。潜在性二分脊椎が疑われる場合、MRIを用いて低位脊髄円錐、脂肪腫、皮膚洞などの有無を確認します。あわせて、下肢機能の評価や排尿機能評価を行い、必要に応じて腎・尿路系の精密検査も実施されます。

治療方針と手術後の管理

治療の基本は、脊髄への過剰な牽引を解除する手術と、症状に応じた長期的な管理です。症状がある場合には係留解除術が検討されます。開放性二分脊椎では出生直後に閉鎖術が行われますが、その後も成長に合わせて再係留や整形外科的な問題、排尿障害を継続して診ていく必要があります。

ただし、手術ですべての症状が完全に消失するとは限りません。特に排尿障害は残りやすいため、自己導尿や腎機能保護を含めた長期的な尿路管理が極めて重要です。脊髄脂肪腫の術後も、20〜30%の割合で再係留による症状悪化が起こる可能性があるため、注意深い経過観察が求められます。

成長に合わせた長期的なフォローアップ

二分脊椎や脊髄係留症候群は、一度の治療で完了するものではありません。成長に合わせた継続的なフォローアップが大切です。小児脳神経外科、泌尿器科、整形外科、リハビリテーション科などが連携し、歩行状態や排尿機能、腎機能などを定期的に評価していくことが、将来の合併症を防ぐことにつながります。

受診の目安となるチェックリスト

お子様に以下のようなサインが見られる場合は、専門の医療機関への相談をお勧めします。

  • 臀裂(おしりの割れ目)より上に皮膚のくぼみがある。
  • くぼみが深い、大きい、または複数存在する。
  • くぼみ以外に、血管腫や毛深さ、しこりなどの異常がある。
  • おしっこが漏れる、尿の回数が多い、強い便秘がある。
  • 歩き方がぎこちない、よくつまずく、足の形に左右差がある。
  • 二分脊椎などの術後、以前よりも排尿・排便や歩行の状態が悪化した。

まとめ

脊髄係留症候群は、脊髄の動きが制限されることで、成長とともに神経症状が現れる病態です。排尿・排便障害や下肢の運動障害、足の変形などが主な症状ですが、早期に適切な評価を行うことで、重症化を防ぐことが可能です。気になる皮膚の所見や、成長に伴う動きの変化、排泄のトラブルがある場合は、放置せずに早めに専門医へご相談ください

参考文献

  1. 小児慢性特定疾病情報センター, 脊髄髄膜瘤 概要.
  2. 小児慢性特定疾病情報センター, 脊髄脂肪腫 概要.
  3. 日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会, 二分脊椎に伴う下部尿路機能障害の診療ガイドライン2017.
  4. Choi SJ, et al., Incidence of Occult Spinal Dysraphism Among Infants With Cutaneous Stigmata and Proportion Managed With Neurosurgery. JAMA Network Open 3(6): e206108. 2020.
  5. 日本小児神経学会, Q40:おしりの割れ目の中に凹みがある赤ちゃんは放置しても良いですか? 2022.
  6. Johns Hopkins All Children’s Hospital, Evaluation of Sacral Dimples/Coccygeal Pits Clinical Pathway. 2022.
  7. 生後3か月未満で紹介された仙尾部皮膚所見を有する児の検討. 小児科関連報告. 2019.

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