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脂漏性皮膚炎

脂漏性皮膚炎は、頭皮、眉間、鼻のわき、耳の周囲など、皮脂の多い場所に赤みやフケ、かゆみを繰り返す皮膚炎です。

皮脂そのものだけが原因ではなく、皮膚に普段から存在するマラセチアという酵母様真菌(カビの仲間)、皮脂の性質、皮膚のバリア機能などが関係すると考えられています1),2)。

治療すると改善しますが、体質や季節によって再発しやすい病気です。一度治したら終わりではなく、悪化時の治療と再発予防を上手に組み合わせることが大切です。

症状

脂漏性皮膚炎は、皮脂腺が多い場所に起こります。

特に多いのは、

  • 頭皮
  • 生え際
  • 眉毛、眉間
  • 鼻のわき
  • 耳の中・耳の後ろ
  • ひげの部分
  • 胸の中央
  • わき

などです。

皮膚が赤くなり、白色~黄色っぽいフケや皮むけが付着します。かゆみはない場合から、強い場合までさまざまです。

頭皮

頭皮では、

  • フケが多い
  • 頭皮が赤い
  • かゆい
  • 黄色っぽいフケが付着する
  • 生え際まで赤くなる

などがみられます。

単なる乾燥によるフケと思ってシャンプーを繰り返すと、かえって刺激で悪化することがあります。

脂漏性皮膚炎そのものが通常、永久的な脱毛を起こすわけではありません。ただし、強い炎症や掻き壊しが続くと、一時的に抜け毛が増えることがあります。

原因

マラセチア

脂漏性皮膚炎には、マラセチアという真菌が関係しています1),2)。

マラセチアは病気の人だけに存在する菌ではなく、多くの人の皮膚に普通に存在する常在菌です。

皮脂を利用して増殖し、皮脂を分解して生じる物質などに対して炎症反応が起こることが、脂漏性皮膚炎の発症に関係すると考えられています。

そのため、抗真菌薬によってマラセチアの増殖を抑えると、症状が改善します。

カビがうつったという感染症ではないため、家族へうつる心配は基本的にありません。

皮脂と体質

脂漏性皮膚炎は皮脂の多い場所に起こりますが、単純に脂っぽいから起こるわけではありません。

皮脂の量や組成、マラセチアへの反応、皮膚のバリア機能などが複合的に関係します。

そのため、顔を何度も洗ったり、皮脂を完全に取り除こうとしたりしても治るわけではありません。むしろ洗いすぎによる刺激で悪化することがあります。

悪化しやすい時

次のような状況で悪化する人がいます。

  • 冬など乾燥する季節
  • 睡眠不足
  • 強いストレス
  • 体調不良
  • 汗や蒸れ
  • 洗いすぎ
  • 肌に合わない整髪料や化粧品

ただし、ストレスや生活習慣だけが原因ではありません。

診断

多くは、症状が出る場所と皮膚の状態から診断できます。

通常、血液検査やアレルギー検査は必要ありません。

似ている病気

脂漏性皮膚炎に似た皮膚疾患として、

  • 乾癬
  • アトピー性皮膚炎
  • 接触皮膚炎
  • 頭部白癬
  • 酒皶
  • 尋常性ざ瘡
  • 皮膚筋炎

などがあります1)。

特に、厚い銀白色の鱗屑が付着する、肘や膝にも発疹がある場合は乾癬を考えます。

顔のほてり、毛細血管拡張、ニキビのようなブツブツが目立つ場合には酒皶の可能性があります。

円形に髪が抜ける、毛が途中で切れている、小児の頭皮に強いフケがある場合などは頭部白癬を調べることがあります。

治療しても改善しない場合は、診断そのものを見直すことが重要です。

治療

脂漏性皮膚炎では、

炎症を抑える治療+マラセチアを抑える治療

を症状に合わせて組み合わせます1),3)。

抗真菌薬

ケトコナゾール:ニゾラール®は、マラセチアの増殖を抑える外用抗真菌薬です。

日本では、脂漏性皮膚炎に対してケトコナゾール2%クリーム・ローションが保険適用されています4)。

通常、脂漏性皮膚炎には1日2回塗布します。

顔、耳周囲、胸などにも使用でき、ステロイド外用薬のような皮膚萎縮を起こさないため、再発を繰り返す人にも使いやすい薬です。

主な副作用は、

  • 刺激感
  • 赤み
  • かゆみ
  • 接触皮膚炎

などです。

国内の比較試験では、ケトコナゾールクリームは脂漏性皮膚炎に対してステロイド外用薬と同程度の改善効果を示し、再発予防にも有用であることが報告されています5)。

ステロイド外用薬

赤みやかゆみなどの炎症が強い時には、ステロイド外用薬を使用します1)。

顔や耳周囲では皮膚が薄いため、通常は弱め~中等度の薬を短期間使用します。

例えば、

ヒドロコルチゾン酪酸エステル ロコイド®
アルクロメタゾンプロピオン酸エステル アルメタ®

などから、部位や症状に合わせて選びます。

頭皮は顔より皮膚が厚いため、症状に応じてローションタイプなどのステロイドを使用します。

ステロイドは炎症を速やかに抑える効果がありますが、顔に強いステロイドを長期間使用すると、

  • 皮膚が薄くなる
  • 毛細血管が目立つ
  • ニキビのような発疹が出る
  • 酒皶様皮膚炎

などが起こることがあります。

そのため、炎症が強い時期に必要な期間使用し、改善したら減量・終了して、抗真菌薬やスキンケアを中心に維持します。

非ステロイド外用薬

顔の脂漏性皮膚炎を繰り返し、ステロイドを長期間使用したくない場合には、タクロリムスなどのカルシニューリン阻害薬が海外ガイドラインや臨床試験で選択肢とされています2),6)。

ただし、日本ではタクロリムス:プロトピック®はアトピー性皮膚炎に対する薬であり、脂漏性皮膚炎には保険適用がありません。

通常の保険診療では、まず抗真菌薬と適切な強さのステロイド外用薬を使用します。

頭皮の治療

薬用シャンプー

頭皮では、抗真菌成分を含むシャンプーが有用です。

海外ではケトコナゾールシャンプーの有効性について複数の臨床試験があります3)。日本ではケトコナゾールシャンプーは医療用医薬品として承認されていません。

市販品では、

  • ミコナゾール硝酸塩
  • ピロクトンオラミン

などを含む薬用シャンプーがあります。

これらは頭皮環境を整える補助的な選択肢になります。

症状が強い場合は、シャンプーだけで治療しようとせず、頭皮用の抗真菌薬やステロイド外用薬を組み合わせます。

シャンプーの方法

頭皮を清潔に保つことは大切ですが、強くこする必要はありません。

  • 爪を立てない
  • 指の腹でやさしく洗う
  • シャンプーを十分にすすぐ
  • 熱すぎるお湯を避ける
  • 洗った後は頭皮を濡れたままにしない

ことを意識します。

フケを落とそうとして頭皮を強くこすると、炎症が悪化します。

通常は1日1回程度の洗髪で十分です。皮脂や汗が少ない人では、肌の状態に合わせて頻度を調整します。

スキンケア

洗顔

顔の脂漏性皮膚炎では、皮脂を落とそうとして1日に何度も洗顔する必要はありません。

通常は朝・夜を目安に、刺激の少ない洗顔料を使用してやさしく洗います。

スクラブ、洗顔ブラシ、強いピーリングなどは、炎症がある時には刺激になりやすいため避けます。

保湿

脂漏性皮膚炎でも保湿は重要です。

脂っぽい肌だから保湿しない方がよいというわけではありません。

皮膚のバリアが低下して乾燥すると、刺激を受けやすくなります。洗顔後は、刺激の少ない保湿剤を使用します。

べたつきが気になる場合は、油分の多い軟膏ではなく、乳液、ローション、ジェルなど使用感の軽い製品を選ぶこともできます。

化粧品

脂漏性皮膚炎があっても、すべての化粧品を中止する必要はありません。

ただし、炎症が強い時期には、

  • アルコールの多い化粧水
  • スクラブ
  • AHA・BHAなどのピーリング成分
  • 高濃度レチノール
  • 刺激を感じるビタミンC製品
  • 香料の強い製品

などは刺激になることがあります。

症状が落ち着いてから、一つずつ再開します。

敏感肌用天然由来オーガニックという表示だけで、刺激や接触アレルギーが起こらないことを保証するものではありません。

食事・生活習慣

食事

特定の食品を禁止すると脂漏性皮膚炎が改善するという質の高いエビデンスはありません。

脂っこいものを食べたから皮脂が増えて脂漏性皮膚炎になると単純に考えることもできません。

通常は、

  • チョコレート
  • 乳製品
  • 揚げ物
  • 香辛料

などを一律に禁止する必要はありません。

バランスのよい食生活を基本とし、特定の食品を摂取するたびに明らかに悪化する場合のみ個別に調整します。

ビタミン・サプリメント

ビタミンB群、亜鉛、ビオチンなどが脂漏性皮膚炎に良いと紹介されることがあります。

明らかな栄養欠乏がある場合は補充が必要ですが、一般的な脂漏性皮膚炎にサプリメントを使用すると改善するという十分な根拠はありません。

サプリメントは、抗真菌薬や外用治療の代わりにはなりません。

睡眠・ストレス

睡眠不足やストレスで悪化する人はいます。

ただし、ストレスがあるから治らないという病気ではありません。生活を完璧に整えなければ治療できないわけでもありません。

薬物治療とスキンケアを基本に、可能な範囲で睡眠や生活リズムを整えます。

乳児

乳児にも脂漏性皮膚炎がみられます。

生後数週~数か月頃に、

  • 頭皮
  • 眉毛
  • 額
  • 耳周囲

などに、黄色っぽい脂性のかさぶたや赤みが出ることがあります。

乳児脂漏性皮膚炎と呼ばれ、多くは成長とともに改善します。

家庭でのケア

頭皮に厚いかさぶたが付着している場合は、入浴前にワセリンなどで柔らかくしてから、シャンプーでやさしく洗い流す方法があります。

無理に爪で剥がす必要はありません。

赤みやかゆみが強い場合には、年齢と部位に合った弱いステロイド外用薬などを短期間使用します。

アトピー性皮膚炎との違い

乳児期早期では、脂漏性皮膚炎とアトピー性皮膚炎を一度の診察だけで完全に区別できないことがあります。

湿疹が長期間続く、身体にも広がる、強いかゆみがある場合などは、経過をみながら診断します。

乳児の湿疹については、当院ホームページのアトピー性皮膚炎のページもご覧ください。

再発予防

脂漏性皮膚炎は、治療すると改善しても再発しやすい病気です。

これは治療が失敗したという意味ではなく、皮脂やマラセチアなどの発症しやすい条件が残っているためです。

再発を繰り返す場合には、

  1. 赤み・かゆみが強い時期
    → ステロイド外用薬などで炎症を抑える
  2. 改善してきたら
    → ステロイドを減らす
  3. その後
    → 抗真菌薬や適切なスキンケアを継続する

という方法で管理します。

抗真菌薬を間欠的に継続することで再発を減らせることも報告されています3),6)。

症状が出るたびに強いステロイドを長期間塗るより、再発の初期に短期間治療し、普段は抗真菌薬やスキンケアで維持する方が適している場合があります。

受診の目安

次のような場合は受診をお勧めします。

  • フケが多く、市販のシャンプーで改善しない
  • 頭皮が赤い、かゆい
  • 眉間や鼻のわきが繰り返し赤くなる
  • 耳の中や耳の後ろが繰り返し荒れる
  • 市販のステロイドを繰り返し使用している
  • 顔の湿疹が数週間以上続いている
  • 頭皮の湿疹と抜け毛がある
  • 乳児の頭皮や顔の湿疹が強い

次の場合は、脂漏性皮膚炎以外の病気も考えて診断を見直します。

  • 治療してもほとんど改善しない
  • 片側だけに強く出る
  • 円形に髪が抜ける
  • 厚いかさぶたや膿がある
  • 肘や膝にも厚い発疹がある
  • 顔のほてりや膿疱が強い

まとめ

脂漏性皮膚炎は、頭皮、眉間、鼻のわき、耳周囲などの皮脂が多い場所に、赤みやフケを繰り返す皮膚炎です。

皮脂だけが原因ではなく、皮膚の常在菌であるマラセチアと、それに対する皮膚の炎症反応が重要です。

治療の基本は、

  • マラセチアを抗真菌薬で抑える
  • 炎症が強い時はステロイド外用薬で早めに治す
  • 頭皮や顔を強く洗いすぎない
  • 肌に合った保湿・スキンケアを行う
  • 改善後も、再発しやすい人では抗真菌薬などを上手に利用する

ことです。

脂漏性皮膚炎は再発することがありますが、治らないから薬を塗り続けるしかないという病気ではありません。症状の強い時期と落ち着いている時期で治療を使い分けることで、良い状態を長く保つことができます。

また、フケや赤みを放置すると、かゆみによる掻き壊し、睡眠への影響、一時的な抜け毛などにつながることがあります。顔では赤みや皮むけが目立ち、仕事や学校、人付き合いの負担になることもあります。

体質だから仕方がないフケ症だからと我慢せず、繰り返す頭皮や顔の赤み・フケはご相談ください。

参考文献

  1. 清佳浩 脂漏性皮膚炎 日本医真菌学会雑誌 2005;46(3):163-167.
  2. Borda LJ Seborrheic Dermatitis and Dandruff: A Comprehensive Review Journal of Clinical and Investigative Dermatology 2015;3(2):1-10.
  3. Okokon EO Topical antifungals for seborrhoeic dermatitis Cochrane Database of Systematic Reviews 2015;(5):CD008138.
  4. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 ニゾラールクリーム2%・ニゾラールローション2% 電子添文 2023年10月改訂.
  5. Nakayama J Efficacy and safety of ketoconazole cream in the treatment of seborrheic dermatitis Journal of Dermatology 2003;30(6):485-489.
  6. Ang-Tiu CU Pimecrolimus 1% cream for the treatment of seborrheic dermatitis: a systematic review of randomized controlled trials Dermatology and Therapy 2022;12(10):2209-2221.

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