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肥満症

肥満は、単に体重が重いということだけではなく、体内に脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。医学的に治療が必要な肥満症との違いを正しく理解し、将来の健康を守るための知識を身につけましょう。

肥満と肥満症の違い

日本では、BMI(体格指数)が25以上の場合を「肥満」と判定します。BMIは以下の計算式で求められます。

BMIの計算式 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
計算例 身長160cm、体重70kgの場合:70 ÷ 1.6 ÷ 1.6 = 27.3(肥満に該当)

ただし、BMIが25以上であれば全員がすぐに病気というわけではありません。医学的に重要なのは、肥満によって健康障害が起きているか、または内臓脂肪が多く将来の健康障害が起こりやすい状態かどうかです。

日本肥満学会では、BMI 25以上の肥満に加えて、肥満に関連する健康障害がある場合、または内臓脂肪の蓄積がある場合を肥満症と定義しています。これは、単なる見た目の問題ではなく、治療が必要な病気です。

肥満症に関連する主な健康障害

肥満症と診断される要因となる健康障害には、以下のようなものがあります。

  • 耐糖能障害・2型糖尿病
  • 高血圧・脂質異常症
  • 高尿酸血症・痛風
  • 冠動脈疾患(心筋梗塞など)・脳梗塞
  • 脂肪肝
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 運動器疾患(膝や腰の痛み)
  • 月経異常・不妊
  • 肥満関連腎臓病

また、BMIが35以上の場合は高度肥満と呼ばれ、健康障害のリスクがさらに高まるため、より積極的な治療が必要になります。

内臓脂肪の重要性

肥満症において特に注意が必要なのが内臓脂肪です。内臓脂肪は、お腹の中の腸の周囲に蓄積する脂肪で、皮下脂肪に比べて血糖や血圧、脂質代謝に悪影響を及ぼしやすいという特徴があります。

日本人は欧米人と比較して、BMIがそれほど高くなくても内臓脂肪がつきやすく、生活習慣病を起こしやすい傾向があります。腹囲は内臓脂肪蓄積の目安となります。

男性の目安 腹囲 85cm以上
女性の目安 腹囲 90cm以上

肥満が全身に及ぼす影響

肥満が危険なのは、脂肪が全身の代謝や炎症に影響を与えるからです。内臓脂肪が増えるとインスリン抵抗性が生じ、血糖が上がりやすくなるほか、血圧上昇や脂質異常、尿酸値の上昇を招きます。

肥満は複数の病気の入り口となることが多く、リスクが重なることで心筋梗塞や脳卒中、心不全、腎臓病の危険性が飛躍的に高まります。

放置することで進行する健康障害

肥満症を放置すると、以下のような疾患が進行する恐れがあります。

糖尿病 内臓脂肪の増加によりインスリンが効きにくくなり発症します。放置すると網膜症や腎症などの合併症につながります。
高血圧 体重増加に伴う血液量の増加や心臓への負担増が原因です。減量により血圧の改善が期待できます。
脂肪肝 肝臓に脂肪がたまる病気です。一部は肝硬変や肝がんへ進行することが知られています。
睡眠時無呼吸症候群 首まわりの脂肪が気道を塞ぐことで起こります。日中の眠気や心血管疾患のリスクを高めます。
関節の悩み 膝や腰への物理的負担が増し、変形性膝関節症などの痛みを引き起こします。

病気や薬が原因となる二次性肥満

肥満の多くは生活習慣による「原発性肥満」ですが、中には病気や薬の影響で体重が増える二次性肥満があります。この場合、原因となる背景を適切に治療することが不可欠です。

内分泌性肥満(ホルモンの異常)

甲状腺機能低下症 代謝が低下し、体重増加やむくみ、だるさが生じます。
クッシング症候群 コルチゾール過剰により、中心性肥満や顔が丸くなる症状が現れます。
多嚢胞性卵巣症候群 月経不順や不妊を伴い、インスリン抵抗性が関係します。

薬剤性・その他の肥満

ステロイド薬や一部の精神科薬、糖尿病治療薬などの影響で体重が増える薬剤性肥満があります。また、脳の視床下部にある食欲調節機能が乱れる視床下部性肥満や、小児期からの著しい肥満を特徴とする遺伝性肥満も存在します。

見逃したくない二次性肥満のサイン

以下のような症状がある場合は、単なる食べ過ぎではなく専門的な検査が必要です。

  • 食事量が変わらないのに急激に体重が増えた
  • 強いむくみや、寒がり、便秘がある
  • 顔が丸くなり、手足の筋力が落ちてきた
  • 皮膚に赤紫色の線(皮膚線条)がある
  • 薬を飲み始めてから体重が増加した

段階的な減量目標の設定

肥満症治療では、最初から大幅な減量を目指す必要はありません。まずは現体重の3%以上の減量を目標にします。

  1. ステップ1:3%の減量
    まずは現在の体重から3%減らします(80kgの方なら2.4kg)。これだけでも代謝指標の改善が期待できます。
  2. ステップ2:5〜10%の減量
    高度肥満症の場合は、5〜10%の減量を目指します。血圧、血糖、脂質、関節痛の明確な改善が期待されます。
  3. 継続的な維持
    短期間の減量ではなく、数ヶ月から数年かけて健康的な状態を維持することを目指します。

生活習慣を整える食事と運動

食事療法は、長く続けられる食事に変えることが基本です。

主食の工夫 大盛りをやめる、菓子パンを食事代わりにしないなど、無理のない範囲で調整します。
たんぱく質 筋肉を落とさないよう、鶏肉、魚、豆腐、卵などをバランスよく摂取します。
食物繊維 野菜、きのこ、海藻を食事の最初に食べる「ベジタブルファースト」が有効です。
飲み物 ジュースや加糖コーヒーを控え、水やお茶、無糖の飲み物を基本にします。

運動については、1日10分多く歩くなどの有酸素運動と、スクワットなどの筋力トレーニングを組み合わせることが推奨されます。膝や腰に痛みがある方は、水中歩行や椅子に座ってできる運動など、関節に負担の少ない方法を選びましょう。

医療機関での多角的な治療

生活習慣の改善だけでは不十分な場合、薬物療法や外科治療を検討することがあります。近年ではGLP-1受容体作動薬などの選択肢も広がっていますが、これらは必ず医師の指導のもとで、食事・運動療法と併用して行う必要があります。

当院のメディカルダイエット

当院では、リベルサス®やマンジャロ®などの薬剤を用いた自費診療の相談も承っております。ただし、これらは単なるダイエット薬ではなく、二次性肥満の有無や全身の健康状態を確認した上で行う医療です。自己流のダイエットでリバウンドを繰り返している方や、何から始めてよいか分からない方は、一度ご相談ください。

ライフステージ別の注意点

小児 成長に必要な栄養を確保しつつ、家族全体で生活習慣を見直すことが重要です。
女性 月経不順や不妊、更年期以降の内臓脂肪増加など、ホルモンバランスの変化に注意します。
高齢者 過度な減量による筋肉量低下(サルコペニア)を避け、筋肉を保ちながら内臓脂肪を減らします。

肥満に関するよくある誤解

見た目だけの問題ですか?

いいえ。肥満症は、高血圧、糖尿病、心血管疾患、関節障害などを引き起こす医学的な病気です。

全部自分の努力不足ですか?

違います。肥満には遺伝、睡眠、ストレス、ホルモン異常など多くの要因が絡んでいます。本人の努力不足と決めつけず、医学的な視点で原因を整理することが大切です。

何十kgも減らさないと意味がない?

そんなことはありません。まずは3%の減量でも、血糖値や肝機能などの数値に良い変化が現れることが多くあります。

まとめ

肥満症治療の目的は、単に体重を落とすことではなく、健康寿命を延ばすことにあります。数キロの減量であっても、将来の心筋梗塞や脳卒中のリスクを確実に減らすことができます。体重や健診結果が気になる方は、放置せずにお気軽にご相談ください。


参考文献

  1. 日本肥満学会 肥満症診療ガイドライン2022 ライフサイエンス出版 2022;1-184.
  2. Knowler WC Reduction in the Incidence of Type 2 Diabetes with Lifestyle Intervention or Metformin New England Journal of Medicine 2002;346(6):393-403.
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  4. Vilar-Gomez E Weight Loss Through Lifestyle Modification Significantly Reduces Features of Nonalcoholic Steatohepatitis Gastroenterology 2015;149(2):367-378.e5.
  5. Lauby-Secretan B Body Fatness and Cancer—Viewpoint of the IARC Working Group New England Journal of Medicine 2016;375(8):794-798.
  6. 日本肥満学会 肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント 日本肥満学会 2025;1-4.

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