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高コレステロール血症・脂質異常症

高コレステロール血症・脂質異常症とは、血液中の脂質、つまりコレステロールや中性脂肪のバランスが崩れた状態です。

以前は高脂血症と呼ばれることもありましたが、現在は、LDLコレステロール、中性脂肪が高いだけでなく、HDLコレステロールが低い状態も含めて脂質異常症と呼びます。

特に重要なのは、いわゆる悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールです。LDLコレステロールが高い状態が続くと、血管の壁にコレステロールがたまり、動脈硬化が進みます。その結果、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患などの原因になります1)。

脂質異常症は、高血圧や糖尿病と同じように、初期にはほとんど自覚症状がありません。痛みもかゆみもなく、普段の生活に支障がないため、健診で指摘されても放置されがちです。

しかし、血管の中では、動脈硬化が静かに進んでいます。
脂質異常症は、症状が出てから治療する病気ではなく、症状が出る前に心筋梗塞や脳梗塞を防ぐために治療する病気です。

1. どんな病気?

高コレステロール血症・脂質異常症とは、血液中の脂質、つまりコレステロールや中性脂肪のバランスが崩れた状態です。

以前は高脂血症と呼ばれることもありましたが、現在は、LDLコレステロール、中性脂肪が高いだけでなく、HDLコレステロールが低い状態も含めて脂質異常症と呼びます。

特に重要なのは、いわゆる悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールです。LDLコレステロールが高い状態が続くと、血管の壁にコレステロールがたまり、動脈硬化が進みます。その結果、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患などの原因になります1)。

脂質異常症は、高血圧や糖尿病と同じように、初期にはほとんど自覚症状がありません。痛みもかゆみもなく、普段の生活に支障がないため、健診で指摘されても放置されがちです。

しかし、血管の中では、動脈硬化が静かに進んでいます。
脂質異常症は、症状が出てから治療する病気ではなく、症状が出る前に心筋梗塞や脳梗塞を防ぐために治療する病気です。

2. 脂質の種類

血液検査でよく見る脂質には、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、non-HDLコレステロールがあります。

LDLコレステロール

LDLコレステロールは、一般に悪玉コレステロールと呼ばれます。LDLが多いと、血管の壁にコレステロールが入り込み、動脈硬化を進めます。

LDLコレステロールは、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患と強く関係しており、治療の中心となる項目です1)。

HDLコレステロール

HDLコレステロールは、一般に善玉コレステロールと呼ばれます。血管などにたまった余分なコレステロールを回収する働きがあります。

HDLコレステロールが低い状態も、動脈硬化のリスクと関連します。ただし、薬でHDLだけを上げればよいという単純なものではなく、運動、禁煙、体重管理、食事改善などが重要です。

中性脂肪

中性脂肪、トリグリセライドは、体のエネルギー源となる脂質です。食べすぎ、飲酒、肥満、糖尿病、運動不足などで高くなりやすい項目です。

中性脂肪が高いと、動脈硬化性疾患のリスクが高くなるだけでなく、非常に高い場合には急性膵炎の原因になることがあります1)。

non-HDLコレステロール

non-HDLコレステロールは、総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値です。LDLだけでなく、動脈硬化に関わるさまざまな脂質を含めて評価できます。

中性脂肪が高い方、食後採血の方、糖尿病やメタボリックシンドロームがある方では、non-HDLコレステロールも重要です1)。

3. 診断基準

日本動脈硬化学会のガイドラインでは、脂質異常症のスクリーニング基準として、以下の値が示されています1)。

LDLコレステロール 140mg/dL以上 高LDLコレステロール血症
LDLコレステロール 120〜139mg/dL 境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール 40mg/dL未満 低HDLコレステロール血症
中性脂肪 150mg/dL以上 高トリグリセライド血症、空腹時
中性脂肪 175mg/dL以上 高トリグリセライド血症、随時
non-HDLコレステロール 170mg/dL以上 高non-HDLコレステロール血症
non-HDLコレステロール 150〜169mg/dL 境界域高non-HDLコレステロール血症

ただし、これらの基準を少し超えたら全員がすぐに薬を飲む、という意味ではありません。実際の治療方針は、年齢、性別、喫煙、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、家族歴、過去の心筋梗塞や脳梗塞の有無などを合わせて判断します。

同じLDLコレステロール150mg/dLでも、30代で他にリスクがない方と、糖尿病・高血圧・喫煙がある60代の方では、治療の必要性が大きく異なります。

4. なぜ危険?

脂質異常症が危険なのは、血管の内側にコレステロールがたまり、動脈硬化を進めるからです。

動脈硬化が進むと、血管の壁にプラークと呼ばれるコレステロールを多く含んだ病変ができます。プラークが大きくなると血管が狭くなります。さらに、プラークが破れると血のかたまりができ、血管が突然詰まります。

心臓の血管で起これば心筋梗塞、脳の血管で起これば脳梗塞、足の血管で起これば末梢動脈疾患になります。

LDLコレステロールは、動脈硬化性心血管疾患の原因因子であることが、多くの疫学研究、遺伝学研究、介入試験から示されています2)。

コレステロールが高いだけで、今は元気という状態でも、血管の中では年単位で動脈硬化が進みます。心筋梗塞や脳梗塞は、ある日突然起こりますが、その準備は何年も前から始まっています。

5. 放置すると

脂質異常症を無治療のまま放置すると、主に動脈硬化による病気のリスクが高くなります。

狭心症・心筋梗塞

LDLコレステロールが高い状態が続くと、冠動脈という心臓の血管に動脈硬化が進みます。血管が狭くなると狭心症、血管が突然詰まると心筋梗塞になります。

心筋梗塞は、胸痛、冷汗、息苦しさを起こし、命に関わります。助かった場合でも、心臓の筋肉が傷み、心不全を起こしやすくなることがあります。

遺伝的にLDLコレステロールが低い人では冠動脈疾患リスクが低く、逆にLDLコレステロールが高くなる遺伝的背景を持つ人ではリスクが高いことが示されています2)。長期間LDLが高い状態にさらされることは、心筋梗塞の危険を積み上げることになります。

脳梗塞

脂質異常症は脳梗塞にも関係します。脳の太い血管や頸動脈に動脈硬化が進むと、血管が狭くなったり、血栓ができたりして脳梗塞を起こします。

脳梗塞は、命に関わるだけでなく、半身麻痺、言語障害、飲み込みの障害、認知機能低下などの後遺症を残すことがあります。

高血圧ほど脳出血との関連が強いわけではありませんが、LDLコレステロールが高い状態は、動脈硬化性脳梗塞のリスクになります。特に高血圧、糖尿病、喫煙を合併している方ではリスクが重なります。

末梢動脈疾患

脂質異常症は、足の血管の動脈硬化にも関係します。足の血管が狭くなると、歩くとふくらはぎが痛くなる、休むと楽になる、足が冷たい、傷が治りにくいといった症状が出ることがあります。

進行すると、足の潰瘍や壊疽につながることがあります。末梢動脈疾患がある方は、足だけでなく、心筋梗塞や脳梗塞のリスクも高いと考えます。

慢性腎臓病

脂質異常症は腎臓の血管にも影響します。また、慢性腎臓病がある方では、心血管疾患のリスクが高く、LDLコレステロールの管理がより重要になります1)。

腎機能が低下している方では、薬の選び方や用量に注意しながら治療します。

急性膵炎

中性脂肪が非常に高い場合、特に500mg/dL以上、さらに1000mg/dLを超えるような場合には、急性膵炎のリスクが高くなります1)。

急性膵炎は、強い腹痛、嘔吐、発熱を起こし、重症化すると命に関わることがあります。中性脂肪が非常に高い方では、心血管病予防だけでなく、膵炎予防のためにも治療が必要です。

6. どのくらい増える?

脂質異常症によるリスクは、LDLコレステロールの高さだけでなく、年齢、性別、血圧、糖尿病、喫煙、慢性腎臓病、家族歴によって変わります。

しかし、LDLコレステロールが高いほど心筋梗塞などの動脈硬化性疾患が増えることは明らかです。

特に大切なのは、LDLコレステロールは高い期間が長いほど危険という点です。遺伝的にLDLコレステロールが低い人を調べた研究では、LDLコレステロールが1mmol/L、つまり約38.7mg/dL低い状態が生涯続くと、冠動脈疾患リスクが約50%低いことが示されています3)。

これは、薬で短期間下げる効果よりもさらに大きい数字です。つまり、若いころからLDLコレステロールが高い状態を放置すると、将来の心筋梗塞リスクを長期間かけて積み上げることになります。

家族性高コレステロール血症では、LDLコレステロールが非常に高い状態が生まれつき続くため、若い年齢から冠動脈疾患を起こしやすくなります。無治療の家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体では、男性で30〜50歳代、女性で50〜70歳代から冠動脈疾患を起こすことがあるとされています1)。

まだ若いから大丈夫ではなく、若い時期からのLDL高値ほど、将来の血管リスクを長く増やす点に注意が必要です。

7. 治療効果

脂質異常症の治療で最も重要なことは、LDLコレステロールを下げると、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが実際に下がることです。

大規模メタ解析では、LDLコレステロールを1mmol/L、つまり約38.7mg/dL下げるごとに、主要血管イベントが約22%低下することが示されています4)。

この主要血管イベントには、心筋梗塞、冠動脈死、冠動脈再建術、脳卒中などが含まれます。

つまり、LDLコレステロールを下げる効果は、次のように考えられます。

  • LDLを約40mg/dL下げると、主要血管イベントが約22%減る
  • LDLを約80mg/dL下げると、主要血管イベントが約40%減る可能性がある
  • LDLをしっかり下げるほど、将来の心筋梗塞・脳卒中を減らしやすい

また、スタチン治療のメタ解析では、LDLコレステロール低下により、冠動脈イベント、脳卒中、血行再建、全死亡が低下することが示されています4)。

薬を飲むほど悪いのかと考える方もいますが、実際には、薬でLDLを下げることで将来の心筋梗塞・脳梗塞のリスクを下げることができます。脂質異常症の治療は、検査値をきれいにするためではなく、命に関わる血管病を防ぐための治療です。

8. 目標値

脂質異常症の治療目標は、全員同じではありません。日本動脈硬化学会のガイドラインでは、動脈硬化性疾患のリスクに応じてLDLコレステロールの管理目標を設定します1)。

一次予防

まだ心筋梗塞や狭心症などを起こしたことがない方では、将来のリスクを評価し、低リスク・中リスク・高リスクに分けます。

一般的なLDLコレステロール管理目標は以下の通りです。

低リスク LDLコレステロール 160mg/dL未満
中リスク LDLコレステロール 140mg/dL未満
高リスク LDLコレステロール 120mg/dL未満

糖尿病、慢性腎臓病、末梢動脈疾患、非心原性脳梗塞などがある方は、高リスクとして扱われます。糖尿病があり、末梢動脈疾患、細小血管症、喫煙、血糖コントロール不良などを伴う場合は、より厳格にLDL 100mg/dL未満を考慮します1)。

二次予防

すでに狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患を起こした方では、再発予防が非常に重要です。一般的な目標は、LDLコレステロール 100mg/dL未満です1)。

さらに、急性冠症候群、家族性高コレステロール血症、糖尿病、冠動脈疾患と非心原性脳梗塞の合併などがある場合は、LDLコレステロール 70mg/dL未満を考慮します1)。

一度心筋梗塞を起こした方は、次の心筋梗塞や心不全を防ぐために、より積極的な脂質管理が必要です。

9. 生活改善

脂質異常症の治療では、生活習慣の改善が基本です。薬を使う場合でも、食事、運動、体重、禁煙、飲酒の見直しは重要です。

食事

LDLコレステロールが高い方では、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸を減らすことが大切です。飽和脂肪酸は、脂身の多い肉、バター、生クリーム、チーズ、洋菓子、揚げ物、加工肉などに多く含まれます。

一方で、魚、大豆製品、野菜、海藻、きのこ、未精製の穀類、食物繊維を意識して摂ることがすすめられます。

コレステロールを多く含む食品だけを避ければよい、という単純なものではありません。卵や魚卵を完全に禁止するよりも、全体として動物性脂肪を減らし、食物繊維や魚を増やすことが重要です。

中性脂肪が高い方では、糖質のとりすぎ、甘い飲み物、菓子、アルコール、夜食、食べすぎが関係します。特にアルコールは中性脂肪を上げやすく、飲酒量を減らすだけで大きく改善することがあります。

体重

肥満、特に内臓脂肪が多い方では、中性脂肪が上がり、HDLコレステロールが下がりやすくなります。体重を減らすことで、中性脂肪、血糖、血圧も改善しやすくなります。

まずは現在の体重の3〜5%減量を目標にすると現実的です。たとえば体重80kgの方では、2.5〜4kg程度の減量でも検査値が改善することがあります。

運動

有酸素運動は、中性脂肪を下げ、HDLコレステロールを上げ、血圧や血糖にも良い影響を与えます。

ウォーキング、自転車、水中歩行、軽いジョギングなどを、無理のない範囲で継続することが大切です。膝や腰が悪い方、心臓病がある方は、運動を始める前に医師に相談してください。

筋力トレーニングも、体重管理や糖代謝改善に役立ちます。最初から激しい運動をする必要はありません。続けられる運動を選ぶことが大切です。

禁煙

喫煙は、LDLコレステロールやHDLコレステロールだけでなく、血管そのものを傷つけます。脂質異常症と喫煙が重なると、動脈硬化性疾患のリスクはさらに高くなります。

脂質異常症の治療では、禁煙は非常に重要な血管予防です。

10. 薬物治療

生活習慣の改善だけでは目標に届かない場合、またはリスクが高い場合には、薬物治療を行います。

薬を使うかどうかは、LDLコレステロールの値だけでなく、心筋梗塞や脳梗塞の既往、糖尿病、慢性腎臓病、高血圧、喫煙、家族歴などを考えて判断します。

薬を飲み始めたら一生やめられないから嫌だと思う方もいます。しかし、薬を避けることが目的ではありません。大切なのは、将来の心筋梗塞や脳梗塞を防ぐことです。

生活改善で十分に下がれば薬を減らせることもあります。一方で、家族性高コレステロール血症や二次予防の方では、長期にしっかり治療を続けることが重要です。

11. 主な薬

スタチン

スタチンは、LDLコレステロールを下げる中心的な薬です。肝臓でのコレステロール合成を抑え、LDLコレステロールを低下させます。

プラバスタチン メバロチン®
シンバスタチン リポバス®
フルバスタチン ローコール®
アトルバスタチン リピトール®
ピタバスタチン リバロ®
ロスバスタチン クレストール®

スタチンは、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントを減らすことが多くの研究で示されています4)。

副作用として、筋肉痛、肝機能障害、CK上昇、まれに横紋筋融解症などがあります。筋肉痛や強いだるさ、褐色尿がある場合は相談してください。

エゼチミブ

エゼチミブ ゼチーア®

エゼチミブ:ゼチーア®は、小腸でのコレステロール吸収を抑える薬です。スタチンで不十分な場合や、スタチンを増量しにくい場合に併用されることがあります。

急性冠症候群後の患者さんを対象とした研究では、スタチンにエゼチミブを追加してLDLコレステロールをさらに下げることで、心血管イベントが減少したことが示されています5)。

PCSK9阻害薬

エボロクマブ レパーサ®
アリロクマブ プラルエント®

PCSK9阻害薬は、LDLコレステロールを強力に下げる注射薬です。代表的な薬には、エボロクマブ:レパーサ®、アリロクマブ:プラルエント®があります。

主に、家族性高コレステロール血症や、心筋梗塞・狭心症などの既往があり、通常治療でもLDLコレステロールが十分に下がらない方で検討されます。

大規模臨床試験では、PCSK9阻害薬によりLDLコレステロールをさらに低下させることで、心血管イベントが減少することが示されています6)7)。

インクリシラン

インクリシラン レクビオ®

インクリシラン:レクビオ®は、PCSK9の産生を抑えるsiRNA製剤です。LDLコレステロールを下げる注射薬で、投与間隔が長いことが特徴です。

家族性高コレステロール血症や、心血管イベントのリスクが高く、既存治療で十分にLDLコレステロールが下がらない方で使用が検討されます。適応や費用、投与間隔については個別に確認します。

フィブラート

フェノフィブラート リピディル®・トライコア®
ベザフィブラート ベザトール®SR
ペマフィブラート パルモディア®

フィブラート系薬は、中性脂肪を下げる薬です。代表的な薬には、フェノフィブラート:リピディル®・トライコア®、ベザフィブラート:ベザトール®SR、ペマフィブラート:パルモディア®があります。

中性脂肪が高い方、特に膵炎リスクがあるほど高い方で検討します。腎機能やスタチンとの併用に注意が必要です。

EPA製剤

イコサペント酸エチル エパデール®

イコサペント酸エチル:エパデール®は、EPA製剤です。中性脂肪を下げる作用があり、動脈硬化性疾患のリスクが高い方で使用されることがあります。

日本人を対象としたJELIS試験では、スタチン治療にEPAを追加することで、主要冠動脈イベントが減少したことが報告されています8)。

12. 家族性高コレステロール血症

家族性高コレステロール血症、FHは、生まれつきLDLコレステロールが高くなりやすい遺伝性の病気です。

特徴は、LDLコレステロールが非常に高い、若い年齢で心筋梗塞や狭心症を起こす、家族にも高コレステロールや若年性心疾患がある、アキレス腱が厚い、黄色腫がある、といった点です1)。

家族性高コレステロール血症では、若いうちから動脈硬化が進みやすいため、早期診断 and 積極的な治療が重要です。本人だけでなく、家族にも同じ体質がある可能性があるため、家族の検査も大切です。

LDLコレステロールが180mg/dL以上、特に200mg/dLを超える場合、家族歴がある場合、若いのに脂質が高い場合は、家族性高コレステロール血症を考えます。

13. 中性脂肪

中性脂肪が高い場合、食べすぎ、飲酒、肥満、糖尿病、運動不足、薬剤、甲状腺機能低下症などを確認します。

中性脂肪が高い方では、LDLコレステロールだけでなく、non-HDLコレステロールやレムナントコレステロールも動脈硬化に関係します1)。

特に中性脂肪が500mg/dL以上の場合は、急性膵炎予防の観点からも重要です。1000mg/dLを超えるような高度高トリグリセライド血症では、食事、禁酒、糖尿病治療、薬物治療を含めて早急な対応が必要です。

中性脂肪は食事の影響を受けやすい項目です。健診で高いと言われた場合、空腹時か食後か、飲酒量、前日の食事、糖尿病の有無も含めて確認します。

14. 小児

小児でも脂質異常症はあります。特に家族性高コレステロール血症では、小児期からLDLコレステロールが高くなります。

小児の脂質異常症では、肥満、食生活、運動不足だけでなく、家族歴が重要です。親や祖父母に若い年齢で心筋梗塞や狭心症を起こした方がいる場合、家族性高コレステロール血症を疑います。

小児期に診断することで、早い段階から生活習慣改善を行い、必要に応じて専門的治療につなげることができます。若い時期からLDLが高い期間を短くすることが、将来の心血管病予防につながります。

15. 女性

女性では、閉経前は比較的LDLコレステロールが低い傾向がありますが、閉経後にLDLコレステロールが上がりやすくなります。

女性だから心筋梗塞は少ないと思われることがありますが、閉経後は動脈硬化リスクが高まります。高血圧、糖尿病、喫煙、慢性腎臓病がある場合は、特に注意が必要です。

妊娠中や妊娠希望がある場合、脂質異常症の薬には注意が必要です。スタチンなどは妊娠中に使用できない薬が多いため、妊娠の可能性がある方は必ず医師に相談してください。

16. 高齢者

高齢者でも脂質管理は重要です。特に、すでに狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患がある方では、再発予防のために脂質管理が必要です。

一方で、高齢者では、フレイル、筋肉量低下、腎機能低下、多剤内服、認知機能、生活背景を考慮します。薬の副作用、飲み忘れ、相互作用にも注意が必要です。

高齢者だから一律に治療しない、という考え方ではなく、本人の健康状態、余命、生活の質、心血管病リスクを総合して判断します。

17. 検査

脂質異常症では、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、non-HDLコレステロールを確認します。

必要に応じて、肝機能、腎機能、血糖、HbA1c、甲状腺機能、尿蛋白、尿酸、CKなどを確認します。二次性脂質異常症として、糖尿病、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、慢性腎臓病、肝胆道系疾患、薬剤性などを確認することもあります1)。

家族性高コレステロール血症が疑われる場合は、アキレス腱肥厚の確認、家族歴、必要に応じて専門医への紹介を検討します。

18. 受診の目安

次のような場合は、医療機関での相談をおすすめします。

LDLコレステロールが140mg/dL以上、LDLコレステロールが180mg/dL以上、健診で脂質異常症を繰り返し指摘される、中性脂肪が300mg/dL以上、特に500mg/dL以上、HDLコレステロールが低い、家族に若い年齢で心筋梗塞や狭心症を起こした方がいる、糖尿病・高血圧・慢性腎臓病がある、喫煙している、過去に狭心症・心筋梗塞・脳梗塞を起こしたことがある場合です。

LDLコレステロールが非常に高い方、中性脂肪が非常に高い方、家族性高コレステロール血症が疑われる方は、放置せず早めの評価が必要です。

19. よくある誤解

症状がないので大丈夫?

脂質異常症は、症状がないまま動脈硬化を進めます。心筋梗塞や脳梗塞が起きてから気づくことがあります。症状がない時期こそ治療のチャンスです。

薬を飲むほど悪い状態ですか?

薬が必要ということは、将来の心筋梗塞や脳梗塞を防ぐために、今のうちから対策した方がよいという意味です。薬を飲むこと自体が悪いのではなく、高いLDLを放置することが危険です。

LDLが少し高いだけなら様子見でよい?

リスクによります。糖尿病、高血圧、喫煙、慢性腎臓病、家族歴がある方では、少し高いLDLでも治療が必要になることがあります。

コレステロールの薬は筋肉に悪い?

スタチンで筋肉痛やCK上昇が起こることはありますが、多くの方は安全に使用できます。筋肉痛、強いだるさ、褐色尿がある場合は相談してください。自己判断で中止せず、薬の種類や量を調整することが大切です。

食事だけで治したいです

食事改善は非常に重要です。ただし、LDLが非常に高い方、家族性高コレステロール血症、糖尿病や心血管病がある方では、食事だけでは不十分なことがあります。生活改善と薬物治療を組み合わせることで、将来のリスクを下げやすくなります。

20. まとめ

高コレステロール血症・脂質異常症は、血液中の脂質バランスが崩れ、動脈硬化を進める病気です。特にLDLコレステロールは、心筋梗塞や脳梗塞の重要な原因です。

脂質異常症は、ほとんど自覚症状がありません。しかし、放置すると血管の中では動脈硬化が進み、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞として発症することがあります。

LDLコレステロールを約40mg/dL下げると、主要血管イベントは約22%低下することが示されています4)。また、若いころからLDLが低い状態が続くと、冠動脈疾患リスクは大きく下がることがわかっています3)。

脂質異常症の治療は、検査値を下げるためだけの治療ではありません。
心筋梗塞を防ぐ治療です。
脳梗塞を防ぐ治療です。
将来の突然死や後遺症を防ぐ治療です。
家族と元気に過ごす時間を守る治療です。

当院では、健診結果、生活習慣、家族歴、糖尿病・高血圧・腎臓病などの合併症を確認し、一人ひとりのリスクに応じて、食事・運動・薬物治療を組み合わせた脂質管理を行います。健診でコレステロールや中性脂肪を指摘された方は、放置せずご相談ください。

参考文献

  1. 日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 日本動脈硬化学会 2022;1-210.
  2. Ference BA Low-density lipoproteins cause atherosclerotic cardiovascular disease. 1. Evidence from genetic, epidemiologic, and clinical studies. A consensus statement from the European Atherosclerosis Society Consensus Panel European Heart Journal 2017;38(32):2459-2472.
  3. Ference BA Effect of long-term exposure to lower low-density lipoprotein cholesterol beginning early in life on the risk of coronary heart disease: a Mendelian randomization analysis Journal of the American College of Cardiology 2012;60(25):2631-2639.
  4. Cholesterol Treatment Trialists’ Collaboration Efficacy and safety of more intensive lowering of LDL cholesterol: a meta-analysis of data from 170,000 participants in 26 randomised trials Lancet 2010;376(9753):1670-1681.
  5. Cannon CP Ezetimibe Added to Statin Therapy after Acute Coronary Syndromes New England Journal of Medicine 2015;372(25):2387-2397.
  6. Sabatine MS Evolocumab and Clinical Outcomes in Patients with Cardiovascular Disease New England Journal of Medicine 2017;376(18):1713-1722.
  7. Schwartz GG Alirocumab and Cardiovascular Outcomes after Acute Coronary Syndrome New England Journal of Medicine 2018;379(22):2097-2107.
  8. Yokoyama M Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients: the Japan EPA Lipid Intervention Study (JELIS) Lancet 2007;369(9567):1090-1098.

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