食物アレルギー
| ポイント1 | 「食べると症状が出る」すべてが食物アレルギーではありません。まずは本当に免疫による反応かを考えます。 |
|---|---|
| ポイント2 | 診断は病歴が最重要です。血液検査や皮膚テストだけで食べられないとは決まりません。 |
| ポイント3 | 治療の基本は、正しい診断に基づく必要最小限の除去です。安全に食べられる範囲は維持します。 |
食物アレルギーとはどのような病気か
食物アレルギーとは、食べ物によって体の免疫が過剰に反応し、症状が起こる病気です。じんましん、口の中の違和感、せき、腹痛、嘔吐など、症状の出方はさまざまで、重い場合にはアナフィラキシーを起こすこともあります。
一方で、食後の体調不良のすべてが食物アレルギーというわけではありません。乳糖不耐症のような不耐症、食中毒、偶然の体調不良など、別の原因で起こることもあります。
食物アレルギーは大きく、IgE依存性(多くは食べてすぐ症状が出るタイプ)と、非IgE依存性(時間をおいて症状が出るタイプ)に分けられます。また、食後の運動で起こる食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)など、特殊な病型もあります。
注意が必要な主な症状
| 臓器 | 主な症状 |
|---|---|
| 皮膚・粘膜 | じんましん、赤み、かゆみ、唇やまぶたの腫れ、口やのどの違和感 |
| 呼吸器 | せき、ゼーゼー、声のかすれ、息苦しさ |
| 消化器・全身 | 腹痛、嘔吐、下痢、ぐったり、顔色不良、意識がもうろうとする |
複数の臓器に症状が同時に出たり、ぐったりする、顔色が悪い、息が苦しい、血圧が下がる、意識がもうろうとするなどの症状を伴う場合は、アナフィラキシーとしてすぐに対応が必要です。
原因となる食物と年齢による変化
| 年齢層 | 多い原因食物の傾向 |
|---|---|
| 乳児〜幼児 | 鶏卵、牛乳、小麦が多い傾向にあります。 |
| 学童以降 | 木の実類、落花生、果物、甲殻類などの比重が高くなります。 |
| 予後 | 牛乳・鶏卵・小麦は成長に伴い食べられるようになることも多い一方、落花生や木の実類は長く続くことがあります。 |
「一度アレルギーといわれたから一生だめ」とも、「少し時間がたったからもう大丈夫」とも自己判断しないことが大切です。
食物アレルギーの診断の流れ
診断でいちばん大切なのは、何を、どれくらい、どんな形で食べて、どのくらいの時間で、どんな症状が出たかを詳しく確認することです。診断および治療方針の決定は、概ね以下のステップで進められます。
-
詳細な問診と病歴の確認
いつ、何を、どれくらい食べて、どのような症状が出たかを詳しく伺い、原因食物の検討をつけます。 -
検査の実施(血液検査・皮膚テスト)
特異的IgE抗体検査や皮膚テストを行います。ただし、検査陽性=除去が必要というわけではありません。 -
食物経口負荷試験の検討
診断の確定や、安全に食べられる範囲を確認するために、実際に食べて症状を確認する食物経口負荷試験が必要になることがあります。
治療の基本は必要最小限の除去です
食物アレルギーの治療の基本は、正しい診断に基づいて、必要最小限だけ除去することです。昔のように「疑わしいものを全部やめる」のではなく、安全に食べられる範囲は食べることが大切です。
これは栄養を保つためだけでなく、日常生活の制限を減らし、食べられる範囲を維持するためにも重要です。特に卵、牛乳、小麦のような日常的な食品を除去する場合は、栄養の偏りに注意が必要です。必要に応じて、管理栄養士と連携しながら食べられる食品の広げ方や代替食品の選び方を確認します。
また、食物アレルギーは食事そのものだけでなく、外食、園や学校、旅行、友人宅でのおやつなど、日常生活全体に影響します。単に「食べないようにする」だけでなく、安全に生活する方法を身につけることも大切です。
緊急時の対応について
アナフィラキシーが疑われるときの第一選択薬は、アドレナリン筋肉注射です。息苦しさ、繰り返すせき、ゼーゼー、声のかすれ、ぐったりする、顔色が悪い、意識がはっきりしないなどの症状がある場合は、ためらわずに救急対応が必要です。エピペンが処方されている方は、使い方だけでなく、どの症状で使うかを普段から確認しておくことが大切です。軽い症状に対しては抗ヒスタミン薬内服を行います。
予防について分かっていること
妊娠中・授乳中に特定の食べ物を除去することは勧められていません。また、離乳食や卵などの開始を必要以上に遅らせることも推奨されていません。特に乳児のアトピー性皮膚炎は食物アレルギー発症の重要なリスク因子であり、まずは皮膚の状態をしっかり整えることが大切です。
受診をご検討いただく目安
以下のような状況に当てはまる場合は、お早めにご相談ください。
- 食べ物を食べたあとに、毎回似た症状が出る
- じんましんだけでなく、せき・ゼーゼー・嘔吐を伴う
- 原因がはっきりしないけれど、同じような症状を繰り返す
- 園・学校生活のために、診断や除去範囲を整理したい
- 「検査だけしてほしい」ではなく、本当に原因食物なのか、どこまで食べられるのかを確認したい
本当に食物アレルギーなのか、どこまで食べられるのかを整理することが、安全で無駄の少ない治療につながります。
参考文献
1) 海老澤元宏, 伊藤浩明, 藤澤隆夫 監修, 一般社団法人日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会 作成, 食物アレルギー診療ガイドライン2021. 協和企画, 東京, (2021).
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