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食物依存性運動誘発アナフィラキシー

食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、特定の食べ物を食べただけでは症状が出ず、運動しただけでも症状が出ないのに、「その食べ物を食べたあとに運動すると」アレルギー症状が起こる病気です。食物アレルギーの特殊なタイプのひとつとして位置づけられています。1)2)

症状はじんましん、かゆみ、顔やまぶたの腫れ、腹痛、咳、息苦しさ、ふらつきなどさまざまで、重い場合はアナフィラキシーになります。運動部活動、体育、ジョギング、階段の上り下りなどをきっかけに起こることがあります。1)3)

食物依存性運動誘発アナフィラキシーのメカニズムと原因

この病気では、原因となる食べ物を食べたあと、一定時間内に運動することで症状が出ます。典型的には、食後30分~2時間くらいで運動したときに起こりやすいですが、もっと幅があることもあります。2)3)

原因食品としてもっともよく知られているのは小麦で、日本でも重要な原因です。特に小麦に含まれるω-5グリアジンは、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因抗原としてよく知られています。2)4)

そのほか、甲殻類、果物、野菜、ナッツ類など、さまざまな食品が原因になることがあります。2)3)

なぜ食べただけではなく運動すると発症するのか

仕組みは完全には分かっていませんが、運動によって腸からの吸収、血流、アレルゲンの体内での動き、肥満細胞の反応しやすさなどが変化し、ふだんは症状が出ない条件でも反応が起こりやすくなると考えられています。2)3)

また、運動以外にも症状を起こしやすくする要因があり、これを増悪因子(cofactor)と呼びます。代表的なものは以下の通りです。2)3)5)

  • NSAIDs(解熱鎮痛薬の一部)
  • アルコール
  • 感染症
  • 月経
  • 睡眠不足
  • 強い疲労
  • 高温多湿や寒冷

運動だけでなく、こうした条件が重なることで発症しやすくなることがあります。

よく見られる症状

症状は通常の即時型食物アレルギーと似ています。よくみられるのは次のような症状です。1)2)

  • じんましん、赤み、かゆみ
  • まぶたやくちびるの腫れ
  • のどの違和感
  • 腹痛、吐き気、嘔吐
  • 咳、ゼーゼー、息苦しさ
  • ふらつき、ぐったり
  • 意識が遠のく感じ

最初は「運動すると毎回かゆくなる」「体育のあとだけ蕁麻疹が出る」程度のこともありますが、次第に重くなることもあります。1)2)

発症しやすい年齢層と体質

小児から成人までみられますが、学童期、思春期、若年成人で目立ちやすい病型です。特に小麦依存性運動誘発アナフィラキシーは、年長児から成人で目立つことが知られています。1)4)

また、アレルギー体質、花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎などをあわせもつ方もいますが、それらがない人でも起こります。2)3)

診断方法と必要な検査

診断で最も大切なのは、「何を食べたあとに、どのくらい時間をあけて、どんな運動をしたら、どんな症状が出たか」という経過です。1)2)

検査としては、原因が疑われる食品の特異的IgE検査を行います。小麦が疑われる場合には、小麦特異的IgEに加えて、ω-5グリアジン特異的IgEが参考になります。4)

ただし、血液検査だけで確定できるとは限りません。検査が陽性でも実際には症状が出ないことがありますし、逆に典型的な経過があれば検査だけでは否定できないこともあります。1)2)4)

必要に応じて、専門施設で食物負荷試験食物+運動負荷試験を行うことがあります。ただし、この検査はアナフィラキシーを起こす可能性があるため、十分な準備のある医療機関で慎重に行う必要があります。2)3)

小麦が原因となる場合の特徴

食物依存性運動誘発アナフィラキシーの中でも、特に多いのが小麦依存性運動誘発アナフィラキシーです。2)4)

この場合、小麦を食べたあとに運動することで症状が出ます。うどん、パン、パスタ、お好み焼き、揚げ物の衣など、日常的な食品が関係するため、見逃されることがあります。4)

小麦が原因の場合、ω-5グリアジンが主要抗原であることが多く、診断の参考になります。4)

また、小麦だけでなく、セモリナ、スペルト小麦、ライ麦、トリチカーレなど、関連する穀類で注意が必要になることがあります。5)

治療と予防のポイント

治療の基本は、原因食品と運動の組み合わせを避けることです。1)2)

一般には、原因食品を食べたあとは少なくとも4時間は運動を避けるように指導されることが多く、症例によっては運動前の一定時間も注意が必要です。3)5)

また、運動予定がある日には、原因食品に加えて、NSAIDsやアルコールなどの増悪因子を避けることも重要です。2)3)5)

症状が強かった方、アナフィラキシー歴のある方では、アドレナリン自己注射薬を携帯し、使い方を本人・家族・学校関係者が理解しておくことが勧められます。3)6)

学校生活では、体育、部活動、持久走、校外学習などで発症することがあるため、学校への情報共有も大切です。6)

発症したときの応急対応

じんましんだけでなく、咳、息苦しさ、声がれ、繰り返す嘔吐、ぐったり、意識が遠のく感じなどがあれば、アナフィラキシーを疑います。1)6)

アナフィラキシーが疑われる場合は、ためらわずにアドレナリン自己注射薬を使用し、救急要請を行うことが基本です。横になれる場合は横にし、呼吸が苦しい場合は楽な姿勢をとります。6)

「少し様子をみよう」と対応が遅れることが危険な場合があります。6)

日常生活で注意すべき4つのポイント

  1. 症状が出た日の状況を記録する
    何を食べたか、何時に食べたか、何時からどの程度の運動をしたか、薬の内服、体調、月経、天候などを記録しておくと、診断に役立ちます。
  2. 運動前後の食事に注意する
    原因食品がはっきりしている場合は、その食品を食べたあとの運動を避けます。原因が小麦なら、パンや麺類だけでなく、見落としやすい加工食品にも注意が必要です。
  3. 解熱鎮痛薬を自己判断で併用しない
    NSAIDsは増悪因子になりうるため、症状歴のある方は特に注意が必要です。
  4. 学校・職場・家族に共有する
    本人だけが知っていても、体育や部活動、外食、旅行などで対応が遅れることがあります。緊急時の対応も含めて共有しておくことが大切です。

よくある質問

Q.食物アレルギーとは何が違うのですか

通常の食物アレルギーでは、その食品を食べただけで症状が出ます。食物依存性運動誘発アナフィラキシーでは、食べただけでは症状が出ず、その後に運動や増悪因子が加わると症状が出る点が特徴です。1)2)

Q.毎回同じように起こりますか

必ずしも毎回ではありません。食べた量、運動の強さ、体調、感染症、薬、月経などが重なったときにだけ起こることがあります。2)3)5)

Q.原因食品は一生食べられませんか

一律には言えません。原因食品、重症度、検査結果によって対応は異なります。自己判断で再開せず、専門医と相談して方針を決めることが大切です。1)2)

まとめ

食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、食べ物と運動が組み合わさったときに初めて起こるアナフィラキシーです。1)2)

原因としては小麦が有名ですが、それ以外の食品でも起こります。2)4)

大切なポイントをまとめると以下の通りです。

  • 症状が出たときの状況を詳しく確認すること
  • 原因食品と運動の組み合わせを避けること
  • 増悪因子にも注意すること
  • 必要な方はアドレナリン自己注射薬を携帯すること
  • 学校や家族と情報共有すること

「食後の運動でじんましんが出る」「体育や部活のあとだけ症状が出る」「小麦を食べた日の運動で具合が悪くなる」といった場合は、お早めにご相談ください。


参考文献

  1. Ebisawa M, Ito K, Fujisawa T. Japanese guidelines for food allergy 2020. Allergology International 69(3): 370-386. (2020)
  2. Srisuwatchari W, Jirapongsananuruk O, Visitsunthorn N. Food-Dependent Exercise-Induced Anaphylaxis: A Distinct Form of Food Allergy-An Updated Review of Diagnostic Approaches and Treatments. Children (Basel) 10(10): 1636. (2023)
  3. Feldweg AM. Food-Dependent, Exercise-Induced Anaphylaxis. Immunology and Allergy Clinics of North America 37(2): 261-272. (2017)
  4. Faihs V, Kugler C, Schmalhofer V, et al. Wheat-dependent exercise-induced anaphylaxis: subtypes, diagnosis, and management. Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft 21(10): 1131-1135. (2023)
  5. Australasian Society of Clinical Immunology and Allergy. Wheat Dependent Exercise Induced Anaphylaxis. (2024閲覧)
  6. Muraro A, Worm M, Alviani C, et al. EAACI guidelines: Anaphylaxis (2021 update). Allergy 77(2): 357-377. (2022)

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