食物負荷試験のススメ(特にピーナッツ・ナッツ)
食物アレルギーは食べられる量を知ることが大切です
完全除去だけが治療ではありません
食物アレルギーと診断されると、保護者の方は、
原因となる食べ物は、完全に避けなければならない
少しでも食べたら危ないのではないか
と不安になることが多いと思います。
もちろん、自己判断で食べることは危険です。
特にピーナッツやナッツ類では、ごく少量でも強い症状が出ることがあります。
一方で、現在の食物アレルギー診療では、すべてを長期間完全に除去するのではなく、
今のお子さんが、安全に食べられる量を正しく確認すること
症状なく食べられた量を、医師の指示のもとで継続すること
がとても大切と考えられています1)。
食物負荷試験とは
食物負荷試験は、原因と疑われる食べ物を医療機関で実際に摂取し、
どのくらいの量まで安全に食べられるか
を確認する検査です。
血液検査で陽性であっても、必ずしもその食品を完全に除去しなければならないとは限りません。
反対に、血液検査だけでは、
- 実際に症状が出るのか
- どの量なら安全に食べられるのか
- どの量から症状が出るのか
- 園や学校でどこまで除去が必要なのか
までは正確にはわかりません。
そのため、食物負荷試験によって、
お子さんごとの安全に食べられる量を確認することが大切です。
大切なのはクリアした量を家で続けることです
当院では、食物負荷試験で症状なく摂取できた量を、
ご家庭でも継続して食べていただくことを重視しています。
食物アレルギーの診療では、
単に検査に合格したかどうかだけが大切なのではありません。
大切なのは、次の流れです。
食物アレルギー改善へのステップ
-
STEP 1
医療機関で食物負荷試験を行う -
STEP 2
安全に食べられる量を確認する -
STEP 3
症状なく食べられた量をご家庭で継続する -
STEP 4
次の負荷試験で少しずつステップアップする
このように、
病院で安全を確認し、家庭で継続する
ことが、食物アレルギーの改善・解除を目指すうえで重要です。
せっかく食べられることがわかった量でも、その後まったく食べない期間が長くなると、次に食べたときに症状が出る可能性があります。
そのため当院では、食物負荷試験の結果をもとに、
- 家庭で続ける量
- 摂取する頻度
- 食べ方の工夫
- 症状が出たときの対応
まで具体的にお伝えしています。
基本的には、医師の指示した量を週3回程度、無理のない形で継続していただきます。
食べられる量を、安全に続けること
それが、寛解・解除を目指すための、もっとも安全で近道となる方法です。
ピーナッツ・ナッツアレルギーへの当院の取り組み
ピーナッツやナッツ類は、少量でも症状が出ることがあり、慎重な対応が必要な食物アレルギーです。
また、卵・牛乳・小麦と比べると、自然に治りにくい傾向があることも知られています。
そのため、長期間ただ完全除去を続けるのではなく、専門医の管理のもとで、
今、どのくらいなら安全に食べられるのか
を正確に見極めることが重要です。
0.1gからの分包対応を行っています
ピーナッツやナッツ類には、ご家庭での継続摂取に大きな課題があります。
たとえば、
- 0.1g
- 0.2g
- 0.5g
といったごく少量を、毎回ご家庭で正確に測ることはとても大変です。
量が少なすぎると測りにくく、日によって量がばらついてしまうこともあります。
そこで当院では、ピーナッツ・ナッツ類について、独自の取り組みとして、
0.1gなどのごく少量から、薬のように分包機で1回量ずつ分包し、1か月分ずつお渡ししています。
これにより、
- 毎回ご家庭で細かく量を測る必要がない
- 指示された量を正確に続けやすい
- 少量から安全にステップアップしやすい
- 保護者の方の負担を減らしやすい
というメリットがあります。
ピーナッツやナッツ類は、
なんとなく少しずつ食べてみることが危険につながることがあります。
当院では、医師の管理下で負荷試験を行い、症状なく食べられた量を、分包した形でご家庭にお渡しすることで、安全に継続しやすい体制を整えています。
味が苦手なお子さんへの工夫も相談できます
食物アレルギーの治療では、
食べられる量がわかっただけでは不十分です。
実際にご家庭で続けられることが、とても大切です。
しかし、お子さんによっては、
- 味が苦手
- においが苦手
- 食感が苦手
- 毎回嫌がってしまう
- 少量でもなかなか飲み込めない
ということがあります。
当院では、味が苦手なお子さんに対して、食材ごとにマスキングの相談も行っています。
たとえば、粉末状のピーナッツやナッツ類であれば、
- ジャム
- チョコソース
- ヨーグルト
- アイス
- ペースト状の食品
などに混ぜることで、味やにおいを感じにくくできる場合があります。
卵・牛乳・小麦などについても、お子さんの年齢や好みに合わせて、無理なく続けやすい食べ方を一緒に考えていきます。
頑張って食べさせるだけではなく、お子さんが続けやすい方法を一緒に考えることも、食物アレルギー診療の大切な一部です。
このような方はご相談ください
以下のような場合は、食物負荷試験を検討できる可能性があります。
- 血液検査で陽性と言われたまま、長期間完全除去している
- 以前症状が出たため、その後ずっと食べていない
- 少量なら食べられそうだが、どの量から始めてよいかわからない
- 園や学校の給食でどこまで除去が必要か相談したい
- ピーナッツ、クルミ、カシューナッツなどのナッツ類を安全に確認したい
- 家庭での継続摂取の量や方法がわからない
- 味が苦手で、指示された量を続けられない
食物負荷試験を行うかどうか、どの量で行うかは、これまでの症状、血液検査、年齢、喘息やアトピー性皮膚炎の状態などを総合的に判断します。
自己判断での摂取・増量は避けてください
食物負荷試験や家庭での継続摂取は、必ず医師の指示のもとで行う必要があります。
特にピーナッツ・ナッツ類では、少量でも強い症状が出ることがあります。
以下のような自己判断は避けてください。
- 少しだけなら大丈夫そう
- 前に症状が軽かったから大丈夫
- お菓子に入っている程度なら大丈夫
- きょうだいが食べられるから大丈夫
- 家で少しずつ増やしてみよう
当院では、お子さんごとのリスクを確認したうえで、
- 負荷試験の量
- 家庭での摂取量
- 摂取頻度
- 症状が出たときの対応
- 次のステップアップの時期
まで具体的に説明しています。
食物アレルギーの解除を目指して
食物アレルギー診療で大切なのは、
危ないからずっと避けるだけではありません。
もちろん、安全が最優先です。
そのうえで、
医療機関で安全に食べられる量を確認する
その量を家庭で継続する
少しずつ食べられる範囲を広げていく
ことが、寛解・解除を目指すための大切な方法です。
当院では、食物負荷試験と家庭での継続摂取を組み合わせながら、お子さん一人ひとりに合わせた食物アレルギー診療を行っています。
どこまで食べてよいかわからない
そろそろ解除できるか確認したい
ピーナッツ・ナッツ類を安全に進めたい
家で続ける方法に困っている
という方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
- Ebisawa M, Ito K, Fujisawa T. Japanese guidelines for food allergy 2020. Allergol Int. 2020;69(3):370-386.
- Togias A, Cooper SF, Acebal ML, Assa’ad A, Baker JR Jr, Beck LA, et al. Addendum guidelines for the prevention of peanut allergy in the United States: Report of the National Institute of Allergy and Infectious Diseases-sponsored expert panel. J Allergy Clin Immunol. 2017;139(1):29-44.
- Du Toit G, Roberts G, Sayre PH, Bahnson HT, Radulovic S, Santos AF, et al. Randomized trial of peanut consumption in infants at risk for peanut allergy. N Engl J Med. 2015;372(9):803-813.
- Du Toit G, Sayre PH, Roberts G, Sever ML, Lawson K, Bahnson HT, et al. Effect of avoidance on peanut allergy after early peanut consumption. N Engl J Med. 2016;374(15):1435-1443.
