ブログ
blog

花粉症の注射治療について

2021.02.26

昨シーズンより、抗IgE抗体ゾレア®が重症スギ花粉症治療に保険適応となりました。

使用するにあたりいくつか条件があり、また比較的高価な治療となりますが、

内服や点鼻薬が効かない重症な方にも効果が期待できます

マル福も使えますので、花粉症でお悩みの方はぜひご検討ください

以下に概要を記載いたします。

①対象は12歳以上で、4週間ごと(又は2週間ごと)に注射します(2-5月に行います)。

②今シーズン、従来の治療法(抗ヒスタミン薬など)で1週間以上治療し、コントロール不良な方が対象となります。

③治療の前に、総IgE値とスギ特異的IgE値を測定する必要があります。

(直近の総IgE値と体重で投与量が決まります。総IgE値が異常高値の場合や、スギ特異的IgE値がClass 2以下の場合は適応となりません)

④3割負担で、4444円〜69953円/月かかります(マル福があれば適用されます)。

(総IgE値と体重により投与量がかわります)

⑤効果はそのシーズン限りとなります。

なお、ゾレア®が適応となるような重症花粉症患者さんは6月以降スギ舌下免疫療法を受けましょう

舌下免疫療法はスギ花粉症に対する唯一の根本治療です。

また舌下免疫療法の効果が十分発揮される前は、秋頃にレーザー治療を行う方法もあります。

ご興味のある方は実施可能な耳鼻科をご紹介致します。

参考)

アレルギー性鼻炎に対する注射療法として、ステロイド筋注(ケナコルト®など)やヒスタミン加人免疫グロブリン(ヒスタグロビン®)を使用している施設が一部あります。

ステロイド筋注は、一回注射すると1-3ヶ月程度効果が持続するとされ、よく「注射1本で薬が要らなくなる」花粉症治療として宣伝されています。非常に魅力的な治療に思われますが、注射部位の皮膚陥没、重篤な感染症リスク増加、糖尿病・高血圧の悪化、満月様顔貌(顔がパンパンになる)、白内障・緑内障の悪化、生理不順など危険な副作用が多数あります厚労省、日本耳鼻咽喉科学会、日本アレルギー学会が非推奨としているリスクの高い治療です。

    ※ケナコルト注射による皮膚萎縮の画像→https://bit.ly/3uxTQdN

ヒスタミン加免疫グロブリンは、ヒト血液由来の製剤です。アレルギー性鼻炎以外のアレルギー疾患にも効果があることがわかっていますが、詳細な機序は明らかになっておりません。ヒト血液由来であるため、パルボウイルスB19(りんご病)の感染リスクや、投薬によるアナフィラキシー症状などのリスクがゼロではありません。即効性はないとされ、効果が出るまで1か月ほどかかります。1シーズンあたり6回ほど注射することが多いようです。1960年代からある薬ですが、最近は使用される機会が少ない薬です(アレルギー性鼻炎ガイドラインでもほとんど言及されていないです)。

近年、副作用が少なく有効性が高い薬剤が多数開発されているため、これらの薬を使用する必要性はまず無いと言えるでしょう。