小児(5-11歳)へのコロナワクチンについて
2022.08.31
2022年3月時点のブログでは、オミクロンの病原性と小児ワクチンのメリット/デメリットに関する情報が限られていたため、院長の見解としては「健常小児に対する推奨度は、判断に迷う」とのコメントを出しておりました。
それから約半年が過ぎ、これらに関する情報量が増えたため、ブログを再度アップいたします。
現在の認識としては、「健常小児にも、コロナワクチンは推奨される」というのが院長の考えです。
主要団体の動きとしては、日本小児科学会も、健康な小児へのワクチン接種は「意義がある」という表現から、「推奨します」という表現に変更しています(2022/8/10付)(1)。
また、国の方針としても、9月より「努力義務」(=強制ではないが接種することを強く求める)が適用される予定です。
まず、新型コロナの病原性についてです。
2022年3月〜2022年8月23日まで、10歳未満の死亡数は男児7人、女児8人となっており、無視できない数となっております(2022年3月以前は、どちらも0名でした)(2)。
成人と比較して小児の呼吸不全例は比較的まれですが、オミクロン株流行以降は小児に特有の疾患であるクループ症候群、熱性けいれんが増加し、脳症、心筋炎などの重症例も報告されています(1)。脳症や心筋炎は命が助かっても後遺症を残す可能性があります。これらの正確な発生数はまとまった報告がありませんが、死亡例よりは多いはずです。
また、MIS-C(小児多系統炎症性症候群)という合併症も知られており、発症後数週間してから川崎病類似症状が出現したり、心機能が急速に低下する例も知られています。2022年7月時点で国内の患者数は少なくとも20例以上とされており、米国ではこの疾患が原因で少なくとも70名が亡くなったそうです(3)。
5-11歳に対するコロナワクチンのメリットは小児科学会HPに詳しいためご参照ください。
以下、重要部分を抜粋します。
・世界各国からの大規模な研究成果が蓄積され、オミクロン株を含めて重症化予防効果が40~80%程度認められることが確認されました。
・流行株がオミクロン株に変わってからの感染予防効果は31%、発症予防効果は51%と低下していますが、入院予防効果は68%と報告されています。
成人の研究では、発症予防効果は経時的に低下していくものの、重症化予防効果は長く続くことがわかっています。小児でもこの傾向は同様と推察されます。
ワクチンのデメリットについても、小児科学会HPから一部抜粋します。
・米国の調査によると、発熱は1回目接種後7.9%、2回目接種後13.4%に認められました。
・国内では、2022年6月12日までに5~11歳の小児に推定2,464,581回(1回目・2回目の総数)のファイザー社製ワクチンが接種され、医療機関から副反応疑いとして報告されたのが、1回目は0.0047%(62件)、2回目は0.0033%(38件)と12歳以上よりも低い頻度でした。
2022年8月5日付けで、「予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い報告状況について」という文書が公表されています(4)。
これによると、2022年2月14日〜7月10日までで、5-11歳のワクチン(コミナティ)は2,692,810回接種が行われました。
この内、ワクチン関連と思われる重篤な副反応として、アナフィラキシー6件、心筋炎5件が認められたそうです。
ワクチン関連の心筋炎については、基本的に軽症で済むことが知られています(5)。
ワクチン後の死亡は1件報告されていました。死亡に関しては、おそらくhttps://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000254623.html の事例であり、因果関係は不明のようです。
しかしこれだけの件数が行われている中で命に関わる重篤な副作用の頻度は極めて低いと考えられます。
オミクロン株の感染力は非常に強く、残念ながら自分も先日罹患してしまいましたが、今後も広がり続けると思われます。
今後感染しないで生活するのはもはや至難の業と言っていいほどであり、ワクチンのデメリットが低く、小児にも一定のリスクがある疾患でわかった今、ワクチン接種は推奨されるべきだと考えます。
参考
(1)日本小児科学会HP
http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=451
(2)データからわかるー新型コロナウイルス感染症情報ー(厚労省)
https://covid19.mhlw.go.jp
(3)NHK
https://www3.nhk.or.jp/lnews/utsunomiya/20220713/1090012810.html
(4)厚労省HP
https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000972951.pdf
(5) Circulation 2022 Feb;145(5):345-356.