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食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹を主病変として、悪化と軽快を繰り返す慢性の皮膚疾患です。診断は皮膚症状の特徴に基づいて行われ、食物アレルギーの証明がなければ診断できないわけではありません。つまり、湿疹があるからといって必ずしも食べ物が原因とは限らないのです。

一方で、特に乳児期には食物アレルギーが湿疹の悪化に関与するタイプが存在します。これは、アトピー性皮膚炎がある乳児が特定の食物に感作(アレルギー反応の準備状態になること)され、その食物が湿疹の悪化や即時型症状を引き起こしている状態です。ただし、すべての乳児に食物が関与しているわけではない点に注意が必要です。

アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの密接な関係

この病態を理解するうえで重要なのは、経皮感作という考え方です。単に「食べたから湿疹が悪くなる」だけでなく、湿疹のある皮膚からアレルゲンが入り込むことで食物アレルギーを合併しやすくなるという関係があります。乳児期早期のアトピー性皮膚炎は、食物アレルギー発症の重要なリスク因子です。

そのため、食物アレルギーの関与を疑う場合でも、まずは皮膚炎そのものを適切に治療することが基本となります。

 

食物アレルギーの関与を疑うべきサイン

食物の関与を考慮すべきなのは、乳児期早期からのアトピー性皮膚炎で、標準的なスキンケアや外用治療を行っても十分な改善が得られない場合です。

一方で、血液検査で陽性反応(感作)があっても、実際には問題なく食べられるケースが少なくありません。検査結果だけで原因食物と決めつけないことが非常に重要です。

日本国内で注意が必要な主な原因食物

現在の日本において、乳幼児の食物アレルギーの主な原因として挙げられる食物は鶏卵牛乳小麦、大豆、米です。従来は「5大抗原」と呼ばれていましたが、実際には鶏卵、牛乳、小麦が原因として多いです。

正確な診断のための検査とプロセス

診断は、問診や皮膚症状の経過、血液検査、除去試験、そして食物経口負荷試験(OFC)を組み合わせて行います。

血液検査や皮膚試験はあくまで補助診断であり、それだけで原因を確定させることはできません。最終的な確定診断のゴールドスタンダードは、実際に除去したり食べて症状を確認する除去負荷負荷試験とされています。

  1. ステップ1:問診
    経過や症状から原因食物を推測します。
  2. ステップ2:検査
    血液検査などで感作の有無を確認します。
  3. ステップ3:食物除去試験
    必要に応じて、疑わしい食物を一時的に制限し、症状が改善するかを観察します。
  4. 最終ステップ:食物経口負荷試験
    再度実際に摂取し、症状が悪化するかどうかで確定診断を行います。

除去試験と食物経口負荷試験の役割

除去試験は診断の一助になりますが、除去して改善しただけで原因と断定することはできません。湿疹は自然経過や外用薬の影響でも変化するためです。不要な食事制限を避け、安全に食事を進めるためには、専門医による食物経口負荷試験が極めて重要です。

食物アレルギーに関するよくある誤解

最も多い誤解は、安易な除去です。湿疹があるからといって、自己判断で卵や牛乳をやめるべきではありません。検査で陽性が出ただけで除去を始めると、お子様の栄養バランスを損なうだけでなく、かえってアレルギーを悪化させるリスクもあります。

また、湿疹が悪化している際に最も優先すべきは皮膚の治療です。皮膚の状態が不十分なまま食物ばかりに目を向けると、本来必要なスキンケアや外用治療が遅れてしまう恐れがあります。

アトピー性皮膚炎治療の基本方針

治療の土台は、食物除去ではなくアトピー性皮膚炎の標準治療を徹底することです。保湿スキンケア、そして医師の指示による外用抗炎症薬の使用が不可欠です。

そのうえで、検査や負荷試験によって原因が明確になった場合に限り、必要最小限の除去を行います。除去の範囲は可能な限り狭くし、診断がついた食物だけを必要な範囲で避けるのが原則です。

除去食を取り入れる際の注意点

自己判断で多くの食品を一度に除去することは避けてください。特に乳幼児期は、除去が長引くほど本来食べられるはずの食品まで避けてしまうリスクが高まります。

また、加熱加工によってアレルゲン性が下がる食品もあります。たとえば、卵であれば加熱することで摂取可能になったり、大豆でも味噌や醤油などの発酵食品は問題なかったりする場合があるため、医師と相談しながら進めましょう。

乳児期におけるアレルギー発症の予防

乳児期早期のアトピー性皮膚炎を適切に治療することは、将来の食物アレルギー予防につながります。現在では、皮膚炎をしっかり治したうえで、離乳食を不必要に遅らせないことが推奨されています。特に鶏卵については、医師の管理下での早期導入が予防に有効である可能性が示されています。

ただし、これは自己判断で進めて良いという意味ではありません。湿疹が強い乳児や重症の場合は、必ず専門的な管理のもとで進めるようにしてください。

乳幼児期と成人期での特徴の違い

食物アレルギーの関与は主に乳幼児で顕著です。成人のアトピー性皮膚炎で食物が影響することは稀で、その比重は低くなる傾向があります。大人の場合は、乾燥花粉ストレス接触刺激など、他の要因が複雑に絡み合っていることが多いのが特徴です。

医療機関への受診をおすすめするケース

以下のような状況に当てはまる場合は、お早めにご相談ください。

  • 乳児期から湿疹が強く、標準的な治療をしても改善しにくい。
  • 特定の食べ物を摂取したあと、じんましんや嘔吐などの症状を繰り返す。
  • 検査で陽性を指摘されたが、本当に除去が必要なのか判断に迷っている
  • 除去食の種類が増え、栄養バランスや離乳食の進め方が不安である。

まとめ:適切な診断と治療のために

食物アレルギーが関与するアトピー性皮膚炎は、乳児期に多く見られる病型ですが、すべての湿疹が食べ物の影響を受けているわけではありません。まずは皮膚炎の治療を優先することが健康な肌への近道です。

診断においては、検査結果を過信せず、食物経口負荷試験などの客観的な評価に基づいた必要最小限の除去を心がけましょう。当院では、標準治療から専門的なアレルギー評価、必要に応じた専門医療機関との連携まで幅広く対応しております。湿疹と食物の関係に不安を感じたら、一人で悩まずにご相談ください。

参考文献

  1. 佐伯秀久・アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024
  2. 海老澤元宏・食物アレルギー診療ガイドライン2021 
  3. 海老澤元宏・食物アレルギーの診療の手引き2023
  4. 海老澤元宏・食物経口負荷試験の手引き2023
  5. 今井孝成・鶏卵アレルギー発症予防に関する提言・日本小児アレルギー学会誌・2017・31巻2号・141-147. 
  6. 海老澤元宏・食物アレルギーの治療・アレルギー・2007・56巻6号・624-633. 
  7. 山口公一・小児期の食物アレルギー―アトピー性皮膚炎との関連と5大食物抗原―・小児内科・2013・45巻3号・361-365. 

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